第15話 元の教室



 体育館から順子がいる教室に戻ってみると、人影がなくなっていた。


「順子?」


 呼びかけても反応がない。


 隠れているのかと思って、あちこち探してみるけど、どこにもいなかった。


 あれから、どこかへ移動したんだろうか。


 まさか。


 順子はかなり怖がっていた。


 一人でどこかにいけるとは思えなかったのに。


 教室の扉の下に何か違和感をかんじて、視線を向けてみる。


 何かがこすれたような跡、ひっかき傷みたいなのがあった。


 これは一体なんだろう。


 その傷は、廊下の奥に続いていた。


「西野、この傷なんだろう」

「分からない、でも何かの手がかりだって思う」


 他に現状を調べる手がかりはなくなってしまった。


 脱出するあてもない。


 この場所にずっととどまっていたら、順子はもどってくるだろうか。


 いや、それはきっとない。


 勘だけれど。待っていても何も変わらない気がした。


「とりあえず、この跡を追っていってみようぜ」

「うん」


 それは西野も同じだったらしい。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る