第8話 貼り紙



 校内が肌寒くなってきた。


 あれからどれだけ時間が経過したのだろう。


 気になったけれど、分からない。


 学校の中にある時計は、全部止まっていたし、この学校は携帯や時計の持ち込みが禁止されていたから。


「西野は携帯とか持ってる?」

「いや、順子は持ってるか」

「あたしも持ってな~い」


 皆、今の時間を確かめるすべがないみたいだった。


 ちょっと困った。


 でも、いつまでも帰らない私達を心配して、誰かが学校に探しにきてくれないだろうか。


 いや、無理だ。


 だって、昭間にこの学校おかしい。


 外にいる人ははいてこられないような気がした。


 歩いていると、廊下に変な紙が貼られているのに気が付いた。


『はんにん』


『うそつき』


『ぬすっと』


 なんだか嫌な貼り紙だ。


 どうしてこんなものがはりつけられているんだろう。


「なにこれ~、君が悪いよ」


 順子も気味悪がっているし、西野も顔をしかめている。


「東子、大丈夫か」

「大丈夫。私は平気」


 嫌な事を思い出してしまった。


 でも、こんな時にそんな事で甘えてられない。


 よく観察してみると、紙がちょっと古かった。


 貼り付けているセロハンテープも乾いてぱさぱさだ。


 さっき張り付けたって感じがしない。


 一体どういう事だろう。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る