鄴城攻略戦

 鄴城城外での野戦決戦では董卓軍が圧勝した。


 しかし袁紹や郭図などは2万の兵士とともに鄴城の中に逃げ込んで未だ健在である。


 鄴城は戦国末期にも秦が元は魏の首都であり趙の第二都市であったここを攻撃しているが、ここの攻略には王翦があたったがかなり苦労している。


 この頃の秦はかなり補給線が伸びていて、兵糧調達があまりうまく行っておらず、もたもたしていれば、楚、魏、趙が一気に攻め込んで来ることにより、逆に秦が滅亡の危機に陥る可能性もあった。


 ここで王翦は鄴の周りの城塞都市を攻め落とし、その落とした城塞都市の住民を鄴へと逃げ込ませて、兵糧攻めを仕掛けた。


 ただ単に力攻めしても簡単に落とせるような場所ではなかったのだ。


 そして鄴城にこもった審配が曹操を迎え撃ったときも、曹操も最初は力攻めをしたがそう簡単に落ちないと悟ると、周辺の城を落として糧道を絶ち、包囲をつづけたがそれでも落ちず、水攻めと兵糧攻めを半年に渡って行い、袁尚の印綬・節鉞を手にいれてそれを城内に見せることによって、審配の兄の審栄が、東門をひらいたことで、ようやく陥落した。


  しかし籠城が長引くと、兵糧が乏しくなり城内の人々は飢えに苦しみ餓死するものが大勢出るが、貴族は贅沢な暮らしをしていたりする。


 そして城が陥落する理由の大半は内側から内応する人間が出て城門を開いたり、外から敵軍を手引きしたりする事が大半だったりする。


「兄上からは無理な力攻めはやめよとのことだ」


 大将軍である董旻は諸将へそう告げた。


「兄上の下よりこちらへ攻城兵器が届くまでは城郭へは矢を打ち込むことにとどめよ。

 ただし土山を作り兵を十二部隊に分け、それを四方の城門へ三部隊ずつ配置し、まず甲が攻撃を仕掛け、甲が疲れて休めば乙が攻撃を仕掛け、乙が疲れて休めば丙が進み、丙が休めば甲が再び進んで矢を射かけよと。

 こうすれば、攻める者は交代交代で休むことができるが、守る者は間断なく攻撃を受け、疲れ切ってしまうのであろうとのことだ」


 なおこれは史実の官渡砦攻撃のために袁紹が行ったこと、砦の中には昼夜を問わず矢が雨のように降り注ぎ、官渡城の中を出歩く者たちは盾をもっていないと行動できなかったとされている。


 その言葉に呂布はうなずく。


「こちらはあちらの5倍。

 ならば兵を分けて城の中へ矢を打ち込み続ければ相手はたまらぬというわけですな。

 さすが義父の考えることはえげつない」


 なお呂布のこの言葉は董卓を褒めているのである。


「またそのときには矢文にて”袁紹・袁尚・郭図・廃帝らは己のみ食料を貪り、民は飢えて餓死するようになるであろう、そうなる前に袁紹・袁尚・郭図・廃帝らの首を持って、我らに下れば餓死することはなくなるであろう”と書いて打ち込むようにと」


「なるほど、そうすれば城内の民が離反して内部での闘いになるかもしれませんな」


 董旻らは董卓の指示に従ってまず城壁を越える高さの土山を作り、弓を持つ兵を十二部隊に分け、それを四方の城門へ三部隊ずつ配置して昼夜の別なく間断なく矢をいかけつづけ、その中に矢文を交えて城内の士気低下を計った。


 野戦では大活躍した呂布や張遼の騎兵だが、城攻めではその機動力を活かすことは出来ないので彼らは糧道の切断のための遊撃に当たることになる。

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