閑話:部下達から見た董卓
俺は牛角。
董将軍のもとで古くから戦ってきた部曲の長の一人だ。
牛家はそれなりに大きな家ではあるが、皇甫家の様な代々将軍を輩出しているような家ではない。
それが今では涼州に残り、董将軍の代わりに涼州統治を任されてるものの一人となっているから大出世といっていい。
そして現在は飯時で部下たちと話をしながら飯を食ってるところだ。
「それにしても俺たちは幸運でしたな。
董将軍の下であれば飢えることも凍えることもないですし」
俺はその言葉に大きくうなずく。
「うむ、若い頃からあの方はそういう方だったのだ。
客人をもてなすのに牛や羊を潰すことをためらわず、褒賞として朝廷より絹を送られた時は配下にそれを配ってしまった。
自分でそれらをすべて独占しようとは考えることはない方なのだ」
ウンウンとうなずく部下たち。
実際に俺たちはずっと長い間、董将軍にしたがって戦ったり、役所で働いたりしてきたが、その間飢えたことはない。
「それを考えれば中央で働いてる連中は大変だよな」
「ああ、まともに俸禄も支払われないらしいぜ」
確かに三輔を除く司隷の役所では、働いても俸禄がでぬところも増えているらしい。
特に異民族の傭兵はまともにもらえてないらしいから反乱を多数起こしている。
「偉そうなことを言う前に、ちゃんと飯を食えるようにするのが当然だよな」
「まったくだ、働いても銭も穀物ももらえねえんじゃ家族ともども餓死してしまうぜ」
「そりゃ黄巾も立ち上がるわけだ」
部下たちの言うとおりだ、人を働かせるならそれに応じて安定した生活を送れるようにするべきなのだろう。
それが出来ているからこそ董将軍のもとには人が集まるのだ。
とはいえあまりおおっぴらに言うべきことでもないが。
「お前たちそれくらいにしておけ」
「へーい」
「わかりやしたー」
まあ、羌族など異民族も一時は反乱を起こしたが今はおとなしい。
董将軍は漢族でも羌族でも区別しない方だからな。
中央から派遣されてくるろくでもない連中も今はいなくなったし平和なのは良いことだ。
・・・
私は曹操、我が父は曹嵩、祖父は中常侍にて大長秋の曹騰。
幼い頃の私は度遼将軍の橋(玄)公祖によって成人して後は辺境防衛につくことを期待されても居た。
なにせ曹氏の先祖は、前漢の丞相であった平陽侯の曹参とされるが、後漢では零落し宦官の一族として世間からは良くない目でみられていたからな。
そんな私が董卓将軍と出会ったのは、桓帝が崩御し党錮の禁が起こった頃だった。
中常侍の管霸・蘇康らが誅殺され他の宦官も皆殺しにになるところだったが、張(奐)然明と董(卓)将軍が竇(武)游平を討ったことで私は命を救われたのだ。
しかし、天子が崩御すればまた同じことが起こるだろうと感じた私は董将軍のもとを訪れ彼に話を聞いた。
「あなたが張然明将軍の下で若いながら功績をあげて武衛将軍となった董仲穎殿か。
私は曹孟徳、どうかあなたの下で戦わせてほしい」
「そいつは構わないがなんで俺なんだ?」
「あなたは出身や出自で差別することなく公平に部下を扱うと聞いたからです」
「ん、まあそれは確かだな」
「また兵法に親しみ、それ故に異民族との戦いで敗れたこともないと聞く」
「まあ、それも本当だな」
「それに今私が生きているのは、竇游平と陳仲挙がもたもたしている間に、張然明将軍がここへ戻って天子の命により彼らを討滅したからです。
竇游平と陳仲挙が迅速に行動していれば今頃は私も、中常侍の管霸及び中常侍の蘇康と同様に一族もろとも殺されていたでしょう、宦官は兵権は持っていないのですからいざとなれば己の身を守ることもできません。
先の党錮の禁からさほどときはたっていないのに状況はあっという間に変化するのですから怖いものですよ。
また党錮の禁による宦官の士大夫に対する弾圧により、士大夫だけでなく民衆からも宦官は憎悪されています。
私は祖父が宦官で父はその養子ですから我が曹家の評判はよくありませんしね。
もし天子がなくなれば宦官とそれに伴う濁流は今度こそ誅滅されるかもしれません」
「なるほどな、俺がやってることも当然知ってるというわけか」
「ええ、袁本初ほどにはめだってはいませんがね」
「まあ、名門袁家のお坊ちゃんがやるのと田舎豪族の俺がやるのでは意味も違うだろうしな」
「何れにせよ私はあなたのもとで働きたいのですが認めていただけませんか?」
「いや、いいぜ、来年元服したらすぐ俺の下に入ってもらおう」
「ありがとうございます」
その後董卓将軍に付き従い并州へ赴いた後に学を学び、董卓将軍に従って南北の反乱を鎮圧するために遠征を行った。
身分の低いとされる医者を活用して兵の間に病が流行らぬようにしたりなどやはり彼は他のものとは大きく違うように見えた。
南陽にて田畑の開墾を行うときも革新的なやり方を行っていた。
そして父を連れて帰ることを認めてくれたおかげで無事に父などの一族を南陽へ連れてくることも出来た。
この人にならついていって間違いはないだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます