とりあえずは農業を推進していくか
さて、袁紹と袁術の対決は、袁紹の反袁術同盟の自壊と言う結果に終わった。
史実の反董卓同盟を考えればこうなるのも当然だっただろうけどな。
反董卓同盟では豫州の地盤を生かして補給を袁術が担当したわけだが、その補給担当の袁術がいない時点でもうダメだと言うのはわかりきってることだ。
しかし、袁術も何進陣営の少帝を袁紹に旗頭として手に入れられては困るという意味もあって、手にかけたのだろうが、それをよく思わないものも多いだろう。
平民出身の何皇后の子より、名家出身の王美人の子のほうが名目の皇帝でもふさわしいとも考えていそうだが。
名家の人間など自分が漢という王朝に権威があってこそ偉いように振る舞えると思ってるのもあるし、袁術よりも家柄が良いものは劉家ならば少なくもない。
俺が名目的には袁術に従って行動している上に、よほどのことがない限り洛陽に近づかないのもよくわかってるだろう。
涼州三明の張奐や皇甫規などのように辺境にいるほうが良いという気質だと思われてるんだろうし、まあそこまで間違ってもいない。
「政治を行うものには、確かな理念が必要です。
国の上に立つ者は儒教の教えと確かな礼節を身につけた方でないと務まりませぬぞ」
儒家の士大夫はこう言う。
「政治を行うものには高貴な血筋が必要です。
父親が涼州の田舎の県史でしか無いようなものには辺境での軍務程度がお似合いですな」
名家の文官はこう言う。
すなわち俺には中央ポストは不釣り合いだと多くの者は考えてるわけだ。
ならばまあそれはそれで良い。
并州・涼州・益州・荊州・揚州に俺がおさえてるわけではないが交州・幽州。
これらはどれも異民族の数多くすむ辺境の地であり文化も未発達な地域とみなされてる。
ならば土地や文化を発展させるようにしてやればいい。
幸いなことに秦嶺山脈と淮河をつなぐ東西に伸びる境界線の南は華南と呼ばれて降水量も多く、温暖で、世界的に寒冷化しているこの時代でも稲作が可能な地域だ。
ただし、川はたくさんあるが基本的に平坦な土地なので、水利用に難がある地域も多い。
だが水車を用いての灌漑による乾田もすでにあるのが救いだな。
「水田をどんどん開かせよ、用水路もつくりつつな」
涼州や益州などで河の上流域では峡谷などとなってしまって、その地形上段々畑になってしまい、連作障害が酷くて放棄されたりもしていたが、水田は連作性が起こらないというメリットが有る。
もっとも水稲は病害や害虫に弱く、冷夏や干ばつにも大変弱いと言う繊細な植物でもあるのが難点だが。
しかし水稲は他の穀類に比べ収穫率がかなり高いうえに、稲わらは他の穀類と比較して牛馬の飼料にも向いているし、その他の使いみちも多い。
この頃は、適正な間隔を開けて苗を受ける正条植えの概念が無いので掘り返した場所へ種籾をばらまくだけであったり、育苗をしても適当な植え方をしていたりであったため、結果として収穫量をかなり落としていた。
さらに比較的簡単に収量を増やせる塩水選別はするべきだろうな。
「塩水に種籾をつけて水上に浮かぶものは田畑に蒔くのではなく食用とせよ。
それらの多くは芽が出ぬであろうからな」
あとは等間隔で植える癖もつけさせようか。
「種を適当にばらまくのではなく、育苗した上で適切な間隔を開けて植えよ。
そのほうが雑草取りも楽だ」
更に水田には鯉や鮒を放つようにさせる。
これは合鴨農法と同様のメリットが有る。
「水田には鯉や鮒を放ち雑草や害虫などを食べさせるようにせよ」
長江以南だとコメの二期作もできるが、このあたりでは収穫が早い大麦と水稲の二毛作のほうが無難か。
「夏は水田で米、冬は水を抜いて畑として大麦をつくるようにせよ。
また、青銅の鋤鍬をつくり、農作業の効率をあげさせよ」
このあたりで使う農具は荊州の江夏郡が銅製品の一大産地であるので青銅製のものを生産させることにした。
青銅は鉄より下の素材と思われているだろうが、必要な燃料の少なさや鋳造の簡単さなどメリットも多く、銅や錫さえ十分手に入ればむしろ効率の良い金属素材なんだ。
鉄はどこにでも豊富にあるというメリットがあるんだけどな。
「牛馬水牛も農作業を行うものへ安価に貸し与えよ」
基本的に牛馬を育てる牧場はこの時代荘園を持つ豪族や領主もしくは官司などしか持てず、まとめて飼育されている。
なので、これを利用する事ができたのはほぼ豪族などの私有する荘園内でしか見られないものだったりする。
牛馬水牛と専用の犂を用いれば田畑を深く耕せるということは結構知られているし土地が広いので日本のようにそれらが使えないということもないのだが。
そんな感じで比較的簡単にできそうなことから、農業の推進を俺はしていくことにしたのだ。
「木を切り倒したらそこには苗木を植えるようにせよ、燃料がなくてはいずれ困るぞ」
鉄ほどではないにせよ青銅を作るにも燃料としての木材が必要で、森林資源は有限であるから植林も行わせるようにしたのだ。
土地が富めば人も安心して集まってくる。
争いがなければなおさらな。
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