光和5年(182年)

北が落ち着いたらやっぱり南に行かされたよ

 さて光和4年(181年)に壇石槐が病死し、鮮卑の大規模な侵略は止まった。


 長城に見張りを立てつつ、交易所での物々交換での交換比率を安定させ、壇石槐の子の和連に反発する鮮卑の他の部族を宴席を設けたり食糧を送って懐柔したことで、鮮卑同士が内輪もめをするに至って、その侵攻はごく小規模なものへとなって事実上北方は落ち着いた。


 年が変わって光和5年(182年)1月、天子は公卿に命じて、州刺史と郡太守の中から問題のある者を検挙させたが、このときの三公の中の太尉の許彧と司空の張済は宦官や濁流派官司から多額の賄賂を貰い受けていたため、宦官の一族縁者や濁流派官司の不正を見過ごして、逆に正しく治めている地方官26人が名前を挙げられ彼らは冤罪を訴え、司徒の陳耽が諫言を行うと、天子は許彧、張済を罷免して、冤罪に巻き込まれた者たちを議郎に任命したそうだ。


「多少まだマシな感覚も残ってるのかな?」


 と思ったが、その後に司徒の陳耽は罷免され、袁隗がその後をついでいたりする。


「やっぱり駄目っぽいな」


 そしていつものごとく、俺は征北将軍を罷免されて、征南将軍として益州・交州・揚州の反乱を鎮圧することになった。


「相変わらずこき使ってくれるよな。

 後漢最北端から後漢最南端に行って南方の反乱を全部鎮圧しろってか……。

 まあしかたあるまい、一度洛陽へ赴いてから新野へ向かおう」


 公孫瓚や劉備は幽州の県史に推薦し、その他のものは連れていくことにした。


「父上、どうか私も戦へと連れて行ってください」


 今回は3男である董仁もついて来たがった。


「ふむ、良かろう、兄たちの下で働くが良い」


「わかりました、がんばります」


 俺たちは兵を率いて一旦洛陽に入り、俺は征北将軍を罷免され、そのかわりに征南将軍に任じられて荊州の新野に駐屯し、荊・豫二州の刺史を統べることになった。


 それから俺は、板楯蛮の反乱は苛酷な労役軍役賦役を課して、彼らを困窮させ、反乱に追い詰めた者が悪いので、公正で有能な太守を送れば良いと進言し、曹謙が巴郡太守に任命される。


 その前の太守は反乱を起こさせ鎮圧できなかったことで死罪になったが、天子の名において板楯蛮の罪を許すという詔を発すると、板楯蛮は曹謙に投降し、益州の反乱は収まった。


「後は荊州南部と交州と揚州か。

 まずは揚州の江夏蛮の反乱から鎮圧しよう」


 また前回同様上表し、豫州や荊州・揚州などで人と兵を募集したいことを伝えると、天子から許可がでたので大々的に募集をした、前回集った豫州から鍾繇や橋瑁にくわえて徐庶や郭嘉・淳于瓊・張魯・辛評・夏侯惇・夏侯淵・許褚などが、荊州からは許攸・黄忠・黄蓋・黄祖・蔡瑁にくわえて蒯良・蒯越・董和など、揚州からは北伐のときからいる陶謙、孫堅にくわえて陸康や陸儁らと共に彼らの率いた武曲や義勇兵が1000ずつほど俺のもとに集まった。


「皆集まってくれたんで助かるぜ」


 こちらも十万人の反乱と言われている状況なので、揚州の廬江郡へ人を派遣して、相手の拠点兵力がどこにどれだけいるか探り、北と西から挟撃して黄穰を切り捨てて、江夏蛮と呼ばれていた異民族は降伏させた。


 交州の蒼梧郡と荊州の桂陽郡の反乱は零陵の太守楊琁が鎮圧したが、荊州刺史の趙凱が”楊琁は他人の戦功を自分の者にしている”と偽の告発をして楊琁は罷免されて洛陽に送られ、獄に入れられたが彼の親族の訴えによって、楊琁は釈放され趙凱が罪を問われて免職になったそうだ。


 そんなこんなで光和6年(183年)になり日南郡に南方諸国から使者が来たりなどしたが、それをもてなしたりして益州・荊州・揚州・交州の治安維持をしている間に夏には大旱魃と蝗害、秋には黄河の氾濫、冬には北部に大寒波の到来により、黄河流域を中心とした後漢北部地域では農作物に多大な被害が出てしまった。


「こいつは来年はやばいな、宦官や太守共が税の免除などをする筈がないし。

 なるほど大規模な反乱が起こるわけだ」


 このころ、張角は密かに中常侍の封諝、徐奉らの内応を取り付け、来年の3月5日を反乱決起の日と定めて、漢への反乱の計画を進めてたのだった。

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