建寧元年(168年)
宦官と外戚と三公など貴族の争いはややこしい
建寧元年(168年)桓帝が崩御して霊帝が即位しその式典に参加するために張奐と一緒におれは洛陽へ向かっていた。
「董仲穎は洛陽は、はじめてかな?」
「はい、私のような田舎者だとなかなか洛陽に行ける機会もございません」
後漢において涼州は半分外国のような扱いの場所でもあるのでなかなか中央へ行ける機会はないのだがそういう生まれた場所での差別が普通に行われているのがこの時代だ。
最も日本でも平安以降は京生まれと坂東生まれでおおきく差別されていたしそこまで変わらないような気もするが。
ちなみに梁冀の一族はもともと涼州出身だったので彼といっしょに洛陽へ行ったものは結構居たし、彼が生きている間はみな出世したようだが、結局彼が粛清され連座して官位を剥奪された後は涼州へ叩き帰らされたものも多かったようだ。
宦官は梁冀に近いものは有能でも復帰させなかったから、無能であればなおさらだ。
とはいえ張奐の今回の洛陽への帰還は勝利の凱旋でもあってちょっと浮かれているふうもある。
「張然明様、先帝がなくなり、今上帝が即位したことできっと宦官を殺そうと大将軍の竇游平はお考えでしょう」
「う、うむ、たしかに今までの習いであればそうなるであろうな」
「しかし梁伯卓のこともあって、宦官も竇游平とその関係者を皆殺しにしたいと思っていましょう」
「うむ、そうかも知れぬな」
「もし、中常侍より帝の制書を持って竇游平を討てと、陛下が仰ったと言われればどうしますか?」
「幼い、今上帝がそんなことを言われるだろうか?」
「おそらく言われないでしょう、しかし、そう言ったとすることはできましょう」
「うむむ、そんな事があるであろうか」
「洛陽の都とはそういう場所のようでございます」
張奐は梁冀とも距離をとっていたが、宦官とも馴れ合っていない。
彼は宦官や地方の役人が不正をすることは好んでいない。
とはいえ梁冀という外戚が専横をふるう様も見て、実際に巻き込まれてるから外戚が権力を握るのも同様に好ましく思っていない。
「そんな事が起こるとも思えんし、考えても無駄であろう」
「そうお考えですか……」
そこへ賈詡が口を挟んできた。
「張然明様、この際どちらにもつかず傍観するというのは最悪の悪手であるとお考えください」
「うむ、どちらも敵に回すゆえ、生き残った方によって殺されるであろうからな」
「それがおわかりでしたらば、私から述べることはございません」
どうも政治に関しては彼は問題を先送りする方向のようだ。
俺たちは洛陽についた。
俺は俺を取り立ててくれた袁隗に挨拶に行くことにする。
「では私は袁次陽様へのお礼を告げに参ります」
「うむ、うまくやり給え」
「はい、張然明様も」
俺は彼と別れて袁隗にあいに行くことにした。
もちろん貢物として絹などを手土産にして面会を申し込む。
「羽林中郎将の董仲穎と申します、袁次陽様へお礼を述べにやってまいりました」
「かしこまりました、客間にてお待ちください」
俺は袁家の屋敷の客間で待たされ、一時間ほど後に袁隗に面会することができた」
「袁次陽様の推挙により羽林中郎将となれました董仲穎と申します。
このたび張然明様に伴われまして上洛いたしましたのでまずはお礼とやってまいりました次第でございます」
「うむ、なかなか活躍しているようだな。
今後も王室のために尽力せよ」
「は、ありがたき事にてございます。
ところで袁次陽様は大将軍となられた竇游平様はどうお考えでしょうか」
「うむ、あまり余計なことはしてくれるなと思う。
先の梁伯卓のようにはなってほしくはないものだ」
「なるほど、そのようにお考えですか」
どうやら彼は外戚側に加わって宦官を誅殺しようとは思っていないようだ。
まあ、任官したばっかりだから手足となる人間もあまり居ないのかもしれないけどな。
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