建和元年(147年)
焼き畑輪作農業はとりあえずうまくいってる感じだな。
さて、俺と同じくらいの子供が集まって皆で畑を耕し手分けして4つの畑に違う作物を植えた翌年の建和元年(147年)になったが、種まきから収穫のその間には雑草取りに加えて、牧場で飼育されている牛糞馬糞や家の周りで放し飼いされておる豚糞鶏糞などに麦わらや籾殻を混ぜてそれを積み上げて何ヶ月か混ぜ返し続けることで肥料の堆肥をつくって畑に追肥もしたよ。
やっぱり肥料があるとないとでは実りがだいぶ違うからな。
この間中央では李固という政治家が梁冀と争って誅殺されるなど梁冀による専横はさらにひどくなってるらしいが、やはり片田舎の涼州では中央の政争はあまり関係がない。
そしてやがて収穫の季節を迎えて麦畑の麦が黄金色の穂をたくさんつけているのはやはり良い景色だ。
「仲穎、麦がたくさん実ってよかったな」
「ああ、これで今年は食べ物には困らなそうだな」
「カブと大豆もうまく育つといいな」
「まあなんとかなるだろ、きっと」
この時代の涼州ではまだ輪作が行われていないので畑は休耕させるか無理に連作するばかりだが、カブはどちらかといえば人間よりも冬場の牧畜のための作物で耕作や雑草取りなどに結構手間がかかるから間に入れるよりも土地を休ませたほうが実際は楽でもある。
ただカブは牛馬がよろこんで食べるし人間も煮て食べればうまいというメリットもあるのだが。
蓮華は完全な牧畜用でもあるが地力を回復させる緑肥として優秀な作物でもある。
「後はこれからこれを続けても収穫量が大きく減らないで済むかどうかだな」
「減ったらどうするんだ?」
「その場合は植えるもんを変えてみたりするしかないな」
実際やってみないとわからないが前世の知識がけっこう役に立ってるのは助かる。
植える作物によって土地が酸性化したりアルカリ性になったりもするし
そして翌年から植え付ける作物を順番に変えていって5年目になり一巡して再び小麦を植えてみたがそれでも前回に比べて麦の収穫量は大きく落ちないことは実証できた。
もっとも広い土地だと人手が足りなければそのまま土地は遊ばせておいて自然に地力を回復させたほうがほうが収穫量そのものは増えるし手間も少ないだろうけどな。
しかし家からあまり離れていない土地でしかもたいして大きくない土地を家庭栽培的に行っているかぎりは成立するのは実証できた。
「どうせ蕪と大豆は夏のもので小麦と蓮華は冬のものだしちょうどいいんじゃないかな。
後は小麦を刈り取った後の夏に粟・稗・黍なんかを栽培し始めてもいいか」
これで無理な連作障害でろくに育たないということはなくなるだろう。
休耕させていたとしても多分もとは取れるはずだ。
父もそれを見てよろこんでくれたよ。
「ほう、常に何かを植え続けても収穫は落ちないというのは素晴らしいな」
「はい、なのでできれば他所の畑でも同じようにやっていただければとおもいます」
「うむ、なるべくそうさせるとしようか」
二毛作をするなら地力の消費には気をつけないといけないけどな。
だから焼き畑的輪作を行うとしてもある程度は土地を休ませる必要はある。
そういう点で水田というのは水のおかげで連作障害がおきないというのはすごいのだがここ涼州では水不足やちょっと春先などは寒すぎて水田は作れないのが残念だが、まだ水車や用水路などによる灌漑技術も進んでいないから水田は基本的に湿田になってしまうのを考えるとそんな問題もなかったかもしれない。
休耕畑を作れる広さがある場合はいいがそうではない場合は重度の連作障害によってまともに作物が育たなくなり畑を手放すことも多いのが農業の難しいところでもあるのだよな。
とはいえ連作障害がひどすぎて税がおさめられず農民が逃げ出して放ったらかされてる土地に蓮華を植えたり堆肥を施肥したりすれば今よりはずっと食料を確保できやすくなるだろう。
農耕も行いながら合間を見て同年代の子供で野うさぎや野鳥などの巻狩をして肉をえたりして連携して獲物を追い詰める訓練もしながら、俺は弟にも馬術や弓術などともに俺の手足となってもらうためにもいろいろなことを教え込みながら成人できる日を待っているのだった。
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