そろそろ兵法なども身に着けて農業にも手を出そうか
さて、俺は弟の面倒を見たりしつつ馬術・弓術・格闘術・蹴鞠・象棋などを行い文武の鍛錬は行ってるつもりだがそれに加えて孫氏呉氏六韜三略などの兵法書などを読むことも始めようと思う。
「父上、役所などに兵書があればぜひ見てみたいと思うのですが」
父はまた息子がなにか言い出したという顔でも有った。
「象棋の次は兵書か、お前の求めるものがなにか変わってきたな」
「父上のような立派な尉になるためには必要だと聞きました」
そういうと父の顔がほころんだ。
「ほうほう、左右に弓を自在に射ることもでき、手縛では同年代では負けなしと聞くがそれだけでは立派な尉にはなれぬのは間違いないな」
まあ、褒められて嫌な人間は居ないが、特に遊牧民の影響が大きい涼州で役人をやってると気づかれもするんだろう。
羌族により人がさらわれたり農作物が奪われたりすることも決して珍しくない。
遊牧民族は力の強いものが弱いものの持っているものを奪ってもよいのは当然というところがあるからな。
「はい、ですので兵法書があればぜひ読ませていただきたいのです」
「わかった、今度探して持ってくるようにする」
「ありがとうございます父上」
そして父の手に入れてきてくれた兵法書を、雨降りなどの理由で外に出るのが難しい日に読むことで兵法の習得に俺は努めた。
この時代の役人は文官と武官を両方こなさなくてはならないことが多い。
無論洛陽のような場所では文武の区別はあるし武官のほうが下に扱われているが、辺境では県史が騎都尉などを兼任していざというときは兵を率いて戦わなけらばならぬことも多い。
漢は秦のあとを引き継いだ皇帝を頂点に抱く中央集権国家なのではあるが、周のような封建制国家としての形態もまだまだ強いのだな。
そして曹操なども若い頃は文武の鍛錬を欠かさず行っていたらしいが彼の軍事の強さは、複数の参謀に進言させその中で最も良いと思われるものを的確に見極めて取り入れたことにあるのだが……。
「このあたりにはそう言うことができるやつもいないんだよな」
基本的にこのあたりでは学よりも武が優先されるのでわざわざ兵法を学ぼうなどという人間はほとんど居ない。
それは象棋の相手がなかなか見つからないということでもある。
西涼の韓遂や馬騰が戦には強くても結局勢力をほとんど広げられなかったのは戦バカだったからだ。
戦に勝つことも大事だがその土地の民から支持を得ることも大事であるしそのためには参謀や文官も大事なのだがどうにかして手に入れられぬものかな。
ちなみに狩りをなりわいとする騎馬民族の血が濃いこの地で俺は個人的に結構尊敬されている。だがそれは暴走族やチーマーのヘッドみたいなものであるが、羌族の有力者たちにもそれなりに顔が知られてきた。
「成人したらうちの娘を嫁にどうかね」
「ありがたいことですが今はまだ非才未熟な身であれば軽々しくお受けはできませぬ」
「そうか、まあその気があればいつでも声をかけてくれ」
「かしこまりましたありがとうございます」
騎馬民族の騎兵を中心とした傭兵は北方では決して少なくなく、そういった族長というのは傭兵団の長でもあるから決して侮ることはできない。
ただし、ちょっと気が変われば裏切ることも少なくないのが厄介なところでもある。
羌族は漢からは異民族として監視されている立場でもあるので今の俺はヤクザの組長に気に入られてるチーマーのヘッドくらいの立場でしかない。
所詮は子供だからと舐められる部分があるのも仕方ないが早く成人したいものだ。
最もそうなれば子供だからという言い訳もきかなくなるわけでもあるが。
このころのこのあたりの農業だが小麦や粟・黍・稗などの雑穀、大豆などの豆はもう作られている。
中国では戦国時代には爆風炉と呼ばれる原始的な高炉がすでにあったように製鉄の技術は結構進んでいたので鉄製農具の普及と牛耕の普及により生産力はそこそこ高い。
米も取れる場所では米と麦の二毛作も行われてるらしいがここらへんでは水が少な過ぎで寒すぎることもあって米の栽培はできない、なにせ気候が寒涼だから涼州という名前になったわけだからな。
「耕畑と閑休畑に分けて栽培するより輪栽式農業を行ったほうがいい気もするな」
基本的に小麦や大豆には連作障害があるので耕畑と閑休畑に分けて交互作をしたりするが、この時代は天水無施肥栽培なので収量も多くはない。
冀州などの人口が多い場所では輪作も行われてるらしいけどここは人口も少ないので閑休畑にしてしまってるというのもあるらしいけどな。
「小麦・蕪・大豆・蓮華の順で多分大丈夫だろうか、でも実験は必要だな」
こうして俺はまた父に相談しに行くことにしたのだ。
「父上、せっかく畑がいっぱいあっても一部だけしか使わないのはもったいなくありませんか?」
「うむうむ、そう思うだろう、だがな同じ畑をずっと使い続けると病気になったり育たなくなったりするのだ」
「そうだったのですか、さすが父上です。
では違うものを植えてみてはどうでしょう?」
「ふむ違うものを植えるとな」
「はい、麦と大豆と蕪と蓮華を毎年違う畑に植えてみるのです」
「はははは、なるほどそう思うか、では畑のすみで試してみなさい」
「ありがとうございます、父上」
俺は子分みたいな同年代の子供を集めて、まずは雑草を刈り取って燃やして灰をまいた後で畑を耕し小麦・大豆・蕪・蓮華をそれぞれの区画に植えさせた。
「なんでこんな面倒な事するんだ?」
「いや、畑を遊ばせておくのももったいない気がするんでな父上に頼んで試してみたいんだよ」
「同じものを植え続けると駄目らしいよ」
「なんで来年は今植えてるのとは違うやつを植えるんだ」
「そうすればちゃんと育つのかな?」
「わからんけど多分大丈夫だと思うぜ」
このあたりの土地は広いとはいえただ畑を遊ばせておくのはもったいないし取れる作物の量が増えると良いな。
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