吸血鬼

 最近は、いくつまで年上の女性となら付き合えるかだろうかと考えてみる。


 若い頃は年上と付き合いたいという願望はなかった。話が合わないし、年下扱いされるのが嫌だったということもある。


 最近は自分が年を取って来て、相手をしてくれる人がいないから、年上にも目を向けるようになって来た。しかし、テレビなんかを見ていると美しい五十代というのは存在するらしい。


 高島礼子、鈴木京香、天海祐希なんかは本当にすごい。

 大地真央なんかは、何と六十七歳だ。みな、若い頃とあまり印象が変わらないことに驚く。


 海外にはイザベル・アジャーニという女優がいて、その人も六十八歳なのだが、驚くほど若い。吸血鬼ではないかという都市伝説があるほどだ。日本の女優を吸血鬼じゃないかと言ったら、誹謗中傷だと叩かれる気がするが、海外の人だと地理的に遠いからかすんなり受け入れてしまう。さすがに全く年を取っていないとは思わないが、三十代にも見える。特に白人は、日本人の感覚では十歳くらい老けて見えるから、二十代でもおかしくないくらいだ。


 吸血鬼は年を取らずに、何百年も生き続けるというのが一般的なイメージだ。年を取らない人として有名なのは、十八世紀に実在したサンジェルマン伯爵。彼を知る人が、異なる年代に何度も会ったが、何十年経っても見た目が変わらなかったと伝えている。この人は不死の象徴として語られることが多く、超常現象好きの間では有名だろうと思う。サンジェルマンというチェーン店のパン屋もある。


***


 俺はある著名な女性に憧れていて、ファンの集うイベントに行ったことがあった。その人は若い頃、それはそれは美しくて、テレビを見ていると画面に吸い込まれそうなほどだった。著名人はきれいだからテレビに出ているのだろうけど、その中でも群を抜いて美しかった。


 長い年月が経ち、俺は初めてファンの集いに参加した。若い頃からファンを楽しませてくれたという感謝と、一度実物を見てみたいという両方の気持ちだった。


 イベント中、その人が俺の近くにもやって来た。俺は瞬きするのも惜しんでその人の姿を見つめていた。

 しかし、スポットライトが当たった状態で見たら、ものすごい厚化粧で皺がすごかった。ぞっとしたというのが正直なところだった。旅芸人の舞台メイクみたいな厚塗りで、実年齢より老けて見えるほどだった。


 その時、著名人はライティングやメイクでごまかしているのだと悟った。最近は特に写真の加工ができるから、実像とはかなりかけ離れているに違いないと思う。


 俺はその時、ファンをやめてしまった。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る