車
俺は月曜日から金曜日まで働く平凡なサラリーマンだ。
朝9時始業で、終わりは夕方6時だから、1日8時間勤務。週に換算すると40時間勤務。働き方改革とコロナの影響で残業はほぼない。通勤時間はドアツードアで30分くらいと、都内に通勤する立場としてはかなり近い方だった。所要時間30分と言っても、自宅から最寄り駅まで8分くらい。電車に10分くらい乗って、駅から職場までが10分ほどだ。
駅からまっすぐの大通りから少し歩くと、俺の家のある方角に曲がる細い道がある。車はあまり通らないが、住人や宅配便の車がたまに通る。そうすると、人が端に寄らないと、ぶつかりそうなくらい狭い道路だ。
ある夜。仕事帰りのことだった。俺がその角を曲がると、向こうから世田谷ナンバーの大きな車が来た。車種はわからなかったが白い車だったと思う。俺の家は世田谷じゃないから、ちょっと記憶に残っていた。
それから、また別の日。同じような場所で、世田谷ナンバーの白い車を見た。先日と同じ車のような気がした。たまたま俺の帰る時間と、あちらが出かけた時間が同じだったのだと思った。世田谷の金持ちと親しい誰かがこの辺に住んでるんだろうな、という感じだった。
また別の日、あの車を見かけた。だいたい同じような場所だった。俺はスーパーに寄って帰ったのに、なぜその車に会ったんだろうと思った。
さらに別の日にも、その車を見かけた。まったく同じ場所で。これは偶然の一致なのだろうか。
最後にあの車を見たのは、10月8日だ。俺はスマホを触りながら歩いていたが、細い道に入った所で、ふと、あの車が気になった。すると、向こうから白い車が近付いて来た。ベンツだった。
白いベンツか・・・怖いな。
俺は立ち止った。
それが、ぐんぐんと近付いて来た。世田谷ナンバーだ。やっぱり、同じ車なんだ。
すごい偶然だな・・・。
「あ」
近すぎる・・・そう、気が付いた時、俺は車に撥ねられていた。
俺は跳ね飛ばされて、横にあった民家の壁に激突した。
全身打撲だった。
なぜ、俺はあの車を何度も見たのかはわからない。
ただ、あの車は今も見つかっていない。
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