　俺の大学時代の同級生で仮面浪人している人がいた。東大を目指していたそうだ。俺が通ってたのは、有名大学だったから、東大に落ちて入学してくる人も結構いた。しかし東大は凡人には無理だと思う。兄は一浪で東大出身なのだが、幼い頃から神童と呼ばれていて、勉強ができることで、学校では有名だった。

　東大は発達障害の人が多いと最近は言われていて、通っていた人曰く、三人に一人はそうだ、ということだった。つまり、発達障害の過集中などの特性がないと無理なのではないかと思う。

　さて、件の仮面浪人の人は、三浪でうちの大学に入ったのだが、納得が行かなかったようで、授業そっちのけで勉強していたらしい。

　毎年、センター試験を受けていたようだが、受かったという話は聞かなかった。

　あれから、30年近く経つが、最近ネットで25浪して東大に入りました、という人の記事を読んだ。人生の半分を受験に費やしてしまったと考えると、あまりにも寂しいが、本人は喜んでいたらしい。マスコミにも盛んに取り上げられていて、キー局でも取り上げられていた。

　俺はそれを見ていて、複雑な心境だった。独身で実家暮らし、働いたこともないそうだ。今、東大に入ったところで何になれると言うんだろうか。雇ってくれる会社なんかないだろう。

　しばらくして、新たなニュース記事が話題になっていた。25浪して東大に合格したのは嘘だったということだ。今年も落ちていた。そして、彼は行方をくらましてしまった。せめて、生きていて欲しいと思う。

　彼は家出人として、Twitterでも捜索されていた。

　最終的に、北の海で遺体で見つかったということだ。

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