貰い子

*本作は実話を脚色したフィクションです。


 これは人から聞いた話。戦後すぐくらいのこと。妙に子沢山の家があった。母親が五十近いのに赤ちゃんがいたらしい。父親はヤ〇ザみたいな風貌で働いていなかったとか。どんどん子どもが増えて行く。多い時は二十人くらいいたらしく、近所の子に交じって遊んでいたが、急にいなくなる。「あの子どうしたんだろうね」と近所の子どもたちが噂していると、また別の子がやって来る。

「あの子どうしたの?」と尋ねると「来たばっかりだから知らない」ということだった。


 どうやらみな貰い子だったらしい。身寄りのない子をたくさん育てていい人達かと言うとそうでもない。貰い子を育てると親から養育費がもらえるから、夫婦はそれを当てにして子どもをどんどん預かっていた。そして、そのうち子どもがいなくなる。どうやら、売り飛ばしていたらしいけど、似たような年の子がいるから、もし〇〇ちゃんはどうしたのか、と聞かれたら別の子を差し出せばいいわけで、なかなかバレるきっかけがなかった。


 おかしいと思って、警察に言った人もいたが、他に凶悪な事件が山ほどあったから、放置されていて世間に知られることはなかった。


 最終的にこの夫婦の企みがバレるきっかけがあった。夫婦二人が突然亡くなって、子どもたちが警察に駆け込んだのだった。夫婦がどうやって亡くなったかは、最後までわからなかった。二人とも油を被って自殺したらしいが、動機が見当たらなかったそうだ。子どもたちが寝ている間に夫婦は火を被ったらしかった。


 その後、子どもたちはみな施設に送られて、その人たちが住んでいた家からは多数の子どもの骨が出て来たそうである。結局、夫婦が殺害したのではないかと思われているが、被疑者が亡くなった後だからどう処理されたかはわからない。


*戦前や戦後すぐには貰い子殺人が数多く起きていて、一つの事件で何十人もの子どもを殺害していたケースがいくつもある。ほとんどは赤ちゃんのうちに殺害されている。預けた人は職業婦人や女中で、産んだ後、育てられなくなったケースが多かったようである。

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