幸運の女神

 俺は籤運が悪い。

 大体外れる。

 商店街のくじ引きで、参加賞以外が当たったためしがない。


 人によっては、特賞は取らなくても、毎回4等、5等を当てる人がいる。

 前の彼女がそうだった。


 彼女と付き合っている頃は俺もついていた。

 カーディーラーの営業をやっていたんだけど、毎月ノルマをクリアしていた。

 新車を月5台くらいと言われていたから、月5台売り続けるなんて奇跡だった。

 彼女は幸運の女神か座敷童のようだった。


 そのうち、彼女が去って行った。

 理由は、俺には将来性が感じられないから、結婚は無理ということだった。

 そのあとは、不思議なくらい、まったく売れなくなってしまった。

 1台も売れない。

 店長に怒鳴られて、かっとなって辞めてしまった。

 でも、カーディーラの頃は、車のローンを引くと、手取りが10万円ちょっとしかなかったから、マックでバイトしてる方がましだった。マックならノルマもないし、怒鳴られることもないと思う。


 俺はマックではない、某外食の店で働くようになった。正社員の肩書に惹かれたからだ。安い店だから、家族連れや若い客が多い。とにかく、いつも混んでる。常連さんもいて、顔を覚えてくれるし、やりがいがある。カーディーラーの仕事と比べたら楽勝だった。独身寮もあって金は貯まる。それに、バイトのかわいい女子大生と付き合いだした。金はないけど順調だ。女子大生の実家は会社をやってて、一人娘。両親にも会った。俺は気に入られている。


 俺の店に元カノがバイトの面接に来た。


 俺は不採用にした。シングルマザーで、金に困ってると言っていた。

 顔は疲れていて、化粧も適当で、髪はプリンになっていた。

 俺と別れた後、サラリーマンと結婚したけど、相手が浮気して離婚したらしい。

 お前、幸運の女神じゃなかったっけ?

 でも、本人が幸福かはわからないもんだ。


 俺と一緒にいたら、今も車が売れ続けてたかもしれない。

 今カノはもちろん好きだけど、別れてなかったらな・・・ちょっとそう思う。

 

 


 

  

 


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