無数の塊
俺は心霊スポット巡りが趣味だ。今まで色々なスポットに行ったことがあるけど、霊に遭遇したことはないと思う。決して、冷やかし半分で行っているわけじゃない。とりあえず、現地には酒、水、線香、塩なんかを持って行く。そういうものが、その場で亡くなった人への供養になるなら、その位はしてあげたいと思う。
俺はある時、投げ込み寺と呼ばれるような類の寺に行った。身寄りのない遊女や行き倒れの人を放り込んだところである。三ノ輪の浄閑寺が有名であるが、他にもある。遊女になること自体が悲劇だけど、遊郭で病気になって亡くなり、さらに寺に置き去りにされるというのが痛ましい。寺で供養してもらっていながら、成仏できていないとなると、営業妨害なのでここでは寺の名前は伏せる。
俺は心霊スポットに行ったら手を合わせるようにしている。すると、そういう行為が霊を引き寄せると言われた。その時、一緒に行った人は霊感がある人だ。見えるけど、除霊はできないそうだ。だから、霊がついて来たら余計に厄介だ。
「霊を見たら素通りした方がいいんだよ。話せる人だと思うとついてきちゃうから」
「じゃあ、どうすればいいの?」
「普通に見て帰ってくればいいんだよ。写真撮ったりしても別にいいけど」
俺は心霊スポット写真を撮るのも好きだ。そうでないと、いつ行ったかを忘れてしまう。
「今、何か見えてる?」
「うん」
「江田さんの後ろに人が10人くらい、人が並んでるよ」
「え?」
俺は後ろを振り返った。何も見えない。
「昔の人だから、すごく背が低くて痩せてる。着物は古くて色あせてる感じで、お金なさそう」
「あ、そう・・・」
「死にかけてるのを運んで来て、ここで亡くなったんだと思う」
「どうしたらいい?」
「知らない」
俺はそのまま帰るわけにいかないから、寺のお坊さんに相談してお経をあげてもらった。
そしたら、5人に減ったそうだ。その他の人達は取り切れなくて、結局連れて帰ることになった。俺には見えないのだけど、その人によると、今でも3人は俺の側についているらしい。それからは、誰かに見られているような気がして仕方がない。
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