遠隔ストーカー

 俺は30代、40代の頃は外資系の会社で働いていた。留学経験は一回もないのだけど、TOEICのハイスコアを取って、英会話を頑張って採用された。俺みたいな人はほとんどいなかった。俺よりさらに上の世代だと英語がそれほど上手じゃない人でも、外資で働いていたと思う。今は無理だろうけど。

 俺がいた頃から、同僚はみな留学経験のある人たちだった。外資で働いている人たちは、プライドが高くて、変わった人や、微妙な人が多かった。外資は数社いたけど、どこでもそうだった。語学の勉強をしていると、それに時間を取られるせいか、他のことを何も知らない人がいたりする。普通だったらクビになるような人が、語学ができるから会社にいるという感じで、すごく大変だった記憶がある。


 その他、特徴的なのは、心を病んでいる人の割合が多いことだ。異文化の人と仕事をするとストレスがたまる。言葉のストレス、考え方の違いで、ブチ切れることが多い。それに、欧米人がアジア系を見下すというのもある。同僚の人曰く、猿だと思われているらしい。

 でも、わからないでもない。日本人だってそういうところがある気がする。


 ある同僚の女性がいた。40代後半。言っちゃ悪いけど、かなり変な人だった。会社のデスクの上が雑貨屋のテーブルみたいになっていて、いろいろな細かい物が置かれていた。机の上はいつもぐちゃぐちゃだった。掃除しているならまだいいのだが、埃を被っていた。足元にもいろいろ置いてあったし、そこだけゴミ屋敷みたいだった。仕事はイマイチだったけど、なぜかクビにはなっていなかった。


 その人は若いイケメン外人が好きで、チャニング・テイタムのファンだった。会社のデスクにも写真を貼っていた。チャニングは、もとはストリッパーの肉体派俳優だ。もちろん、みんな気持ち悪がっていたが、お局なので周囲には話を合わせている人もいた。彼女は独身で、お嬢様らしかった。若い頃はきれいだったのかもしれないという顔立ちだった。


 その人がよく、露出度の高い服を着て来て迷惑だった記憶がある。会社にタンクトップとかで来るのだけど、誰も見たくなかったと思う。スカートも短かった。俺も目を合わせないようにしていた。そして、何よりも雑談が多くてうるさかった。


 彼女は海外にある本社に、好みのイケメンがいた。毎日のようにメールのやり取りをしていたけど、それは仕事だからであって、友達だからではない。でも、彼女はそれが理解できなかった。誕生日、バレンタインデー、クリスマスにはAirMailでカードを送っていた。彼から返事が来たことはなかったようだ。彼は結婚して奥さんもいたし、あちらは30歳くらい。彼が彼女をどう思っていたかは、ちゃんと聞いたことはない。


 彼はFacebookをやっていて、彼女もFriendになっていたらしい。俺もアカウントを作ってみたけど、名前も外人名を名乗っていて、ちょっと写真を上げているだけだったから、日本人の知り合いには気付かれなかったと思う。俺は彼のFacebookをよく見ていて、お局がコメントを残しているのを見て面白がっていた。


 その後、彼女はクビになってしまった。仕事自体よりも、人物でそうなったのかもしれない。彼女は、会社をやめた後に彼にお礼のプレゼントを贈ったそうだ。果物を送ったけど、届いたときには腐っていたとか・・・。それを本人から聞いた。海外に果物を送るのは大変だ。検疫をしないといけなくて、いろいろ手続きが大変だったろうけど、そこまでしたのに腐ってしまったと考えるとちょっとおかしかた。本社のオフィスに届いたらしいけど、そのまま捨てたということだった。


 仕事を辞めた後も、誕生日、クリスマス、バレンタインにはカードを送っていたそうだが、彼がその後、会社を辞めたので、今どうしているかは知らない。まだ、フェイスブックにページがあれば、そちらにまだコンタクトしているかもしれない。

 でも、ブロックされているんじゃないかなと思う。


 彼もよく返事を出していたなと感心する。外国人だから、フレンドリーな日本人だと思っていただけかもしれない。普段一緒に働いていたから、余計に気持ち悪く感じるだけかもしれない。俺にとってもトラウマだ。














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