ナメクジ
俺の人生で忘れられない瞬間がある。これは本当の話。
まだ小学生の頃、夏の夜に家族で夕飯を食っていた時だ。
その日は焼き魚が出てきた。
俺が魚を食べていたら、魚の下から大きなナメクジが這いだしてきた。
3センチくらいあったと思う。
俺は悲鳴を上げながら、口に入っていた魚を吐き出した。
なぜかわからないけど、俺の魚にだけナメクジがついていたらしい。
理由は、母親が台所の窓を開けた状態で料理をしていて、外からナメクジが這って来たようだ。あり得ないかもしれないけど、俺の実家には網戸が一つもなかった。ちなみに、欧米では網戸はあまりないそうだ。我が家では夏の暑いときは、どうしていたのか不思議と覚えていない。
もちろん、昔だからエアコンもないし、さらに扇風機もなかった。親が電化製品を嫌がっていて、どちらも使ったことがなかった。俺は50歳だけど、決して年を胡麻化しているわけではない。
ナメクジに関連してよく知られているのは、広東住血線虫という寄生虫だ。もともとは、ネズミの肺動脈に寄生する線虫で、それが糞便に交じって外界に出て来て、それをナメクジ、カタツムリなどの中間宿主が捕食して体内に入る。中間宿主の中で、人間に感染しうるまで成長して、よく洗っていない生野菜を摂取して人体に入ることがある。
数年前に、庭にいたナメクジを食べて、長期間闘病していたオーストラリアの男性が死亡した事例があった。これは、度々、ネットニュースで取り上げられているから、知っている人も多いかもしれない。広東住血線虫は髄膜炎を引き起こすが、2週間くらいで発熱、頭痛、嘔吐などの症状が現れるそうだ。日本では50例以上あって、1名亡くなっている。
運よく俺は大丈夫だった・・・。
俺の家はネズミもいたから、リスクはかなり高かったかもしれない。ナメクジが這った辺りを食べていなかったのか、そのナメクジが感染していなかったのか・・・。
とにかく、あの日のことは一生忘れないだろう。
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