かまって

 とにかく、かまってほしいタイプの女というのが時々いる。しょっちゅう具合が悪い、忙しい、大変だとほざいているような女だ。話していても嘘が多くて、本当のことは盛って話す。気持ちのアップダウンが激しくて、私のことをみんな嫌っているとか、極端になりやすい。付き合うと、束縛がきつくて、他の女の話をするとすねる。男でもこういうタイプはいるが、正直言って鬱陶しい。


 俺の知り合いで彼女がかまってちゃんという人がいた。男性の名前はAさん。彼女とは会社で出会ったけど、その評判は決して良くなかったらしい。同じ部署の人によると、仕事ができない子らしかった。話すと普通だけど、ありえないほど常識がなかったとか。


 でも、外見がすごくかわいくて、性格が良さそうだったから、Aさんも彼女に声を掛けてみた。第一印象は愛想がよくて、いい子だと思っていたそうだ。Aさんは共通の友達を誘って、男女2対2で飲みに行った。2時間くらい一緒にいても、話題が豊富で、明るくて、一緒にいて楽しい子だった。それから、2人はどんどん親しくなっていったらしい。


 Aさんは彼女に交際を申し込んだ。彼女は意外にもフリーだったのでOKしてくれた。それからは、土日は毎週彼女と過ごすようになった。すると、A君は同性の友達と会えないから、友達の彼女と一緒にみんなで遊ぼうと提案する。すると、彼女は友達の彼女と浮気をするんじゃないかと気にし始めた。


「あっちは全然かわいい子じゃないから。それより、俺の友達が〇〇の子と好きになる方が心配だよ」


 そう言っても、彼女は絶対行かないし、Aさんにも行って欲しくないと言う。そのうち、Aさんは先に友達と遊ぶ予定を入れるようになった。彼女とは別れようかと思い始めていた。すると、その週末に彼女から「具合が悪い」という連絡があった。彼女は一人暮らしだから、Aさんは放って置けず、予定をキャンセルして彼女の部屋に行った。すると、最初は気持ちが悪くて吐きそう、と言っているのに、ちょっと目を離すと普通にスマホをいじっていた。いつも、Lineの返信が異常に早いから、友達にでも送っているらしかった。

「あ、こいつ仮病使ってるんだ」と、わかって一気に冷めてしまった。


 夜になると、Aさんは夕飯を作ってやって、帰ろうとする。すると、「夜中に具合が悪くなるかも」と言い始める。Aさんは別れ話をしたいが、具合が悪いから延び延びになっていた。


 ようやく、平日の夜飯を食っている時に「やっぱり別れよう」と切り出すことができた。すると、「最初から遊びだったんだ」と、泣き出す。「悪いところがあったら直すから、別れないで」と彼女は懇願した。Aさんは土日のうち半分は好きなことをしたいというのを条件にした。


 でも、彼女は男だけで出かける時も、一緒について来ようとする。


「やっぱり付き合えきれない」と言って、別れることにしたが、「別れたくない」というLineが何回も来る。彼女は職場の人にAさんに遊ばれたと言って同情を引こうとしていた。Aさんは彼女を無視していた。


 Aさんは、「彼女がかわいそうじゃない?」と周囲から説教をされることもあった。彼女の世界では彼女が中心。彼女は完璧なヒロイン。末路は精神病になって引きこもりかなと思っていたら、その後、彼女は結婚して仕事をやめていった。


 結婚した相手は10歳以上年上の人で、彼女に合わせてあげる包容力のあるタイプ。同じ部署の先輩らしい。年下で甘えん坊のかわいい彼女と思えば許せるんだろう。男は年を取ると友達が減って行くし、2人はお似合いだった。


 Aさんの方はなぜか独身。付き合った相手は、後にも先にも彼女だけ。彼女はメンヘラじゃなくて、ちょっと嫉妬深かっただけ。Aさんの方に問題があったのかもしれない。彼は今も元カノの写真をスマホに入れているし、アイドルみたいにかわいかったと自慢している。かまってちゃんは、彼の方だったのかもしれない。

 

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