袋法師(エロ)

 歴史的に見てもエロは娯楽だと思う。春画は平安時代初期からあったと推定されているそうだ。初期の物は中国から伝来した医学書にあった、房中術の指南書の中の絵だったとか。


 日本における最も古い春画絵巻に『袋法師絵詞』という絵巻があるが、14世紀には成立していたようだ。その他、『小柴垣草紙』という院政期に描かれたというものと、男色物の『稚児之草紙』と並んで、日本の三大性愛絵巻と言われている。『袋法師絵詞』の原本は、江戸時代大奥にあったものが焼失してしまったが、写本が複数流布しているそうである。


 ストーリーはこんな感じ。細かいところは間違っているかもしれないので、悪しからず。


 尼御所に仕えている侍女たちが神社に詣でた。帰り道で雨が降り、運悪く川が増水し、徒歩で渡れなくなってしまった。そこに親切な法師が現れて、小舟で侍女たちを渡してやると申し出る。侍女たちが船に乗り込んでみると、約束とは違い、中州に降ろされてしまった。法師は侍女たちに圧力をかけて、猥褻行為をしようとする。侍女たちは機嫌を損ねないように、法師の言いなりになる。

 その後、無事に対岸に渡り、御所まで送り届けてもらう。侍女たちは、主人の尼君が男日照りで元気がないのを慰めするために、法師にまた御所に来るように誘う。尼御所は男子禁制なので、法師を袋に入れて、納屋に隠し、夜になってから尼君の寝所に届ける。法師が袋から出してもらえるのは、房事の時のみということなので、監禁状態にあるわけだ。尼君と法師は懇ろになり、毎夜、睦みあっているので、侍女たちは法師を返してほしいと言い始める。

 この噂を聞いた、尼君の従妹(こちらも尼君)が、自分にも法師を貸してほしいと言うので、侍女たちは法師を袋に入れて送り届ける。そこで、従妹君にも奉仕させられて法師は廃人同然になり、山に返される。


 この話が、男と女どちらの目線で描かれているのかは謎だ。現代の価値観では、この法師のようなクソ野郎を、敢えて竿役には据えないだろうし、好色な尼君がヒロインとだと男受けもしないと思う。どちらかというと、この話は笑い話のようなものなのだろう。


 それに、若く好色な法師を袋に入れて、納屋に監禁するというのも不気味である。この話がなぜ高貴な人たちの間で好まれたのかは、俺には謎だ。

 しかし、エログロなストーリーから受けるインモラルなイメージには、引き付けられるものがある気がする。


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