勧誘(エッセイ)
俺は先日、郊外のある駅に行った。たまたま金持ちが住んでいることもあるかもしれないが、高級住宅地とは程遠い場所だった。東京は〇〇区の住所は真の勝ち組というような区がいくつかある。金持ちは大体そういう所に住んでいて、その辺が関西とは違う。関西だと高級住宅街のすぐ隣に庶民の街があったりする。
俺は用事があって、2時間くらいそこで潰さなくてはいけないので、パン屋のイートンで100円コーヒーを買ってパンを1個買って本を読んでいた。俺はケチだから、マックがなかったら次に安い店を探して入ることにしている。
すると、そこにマルチ商法の営業の人が打ち合わせで入って来た。若い女と中年の女の二人組。そんな店で打ち合わせをしている段階で儲かっていないのが見え見えだった。何を話していたか忘れたけど、しばらくして、ちょっとイケメン風の男が入って来た。マルチ商法の勧誘だったらしい。スーツ姿だったけど、上下がバラバラで微妙な感じだった。明らかにサラリーマンではない感じだった。
女がしゃべり始めた。営業トークが下手過ぎた。商材が何か覚えていないが、「今、私25なんですけどぉ、儲かり過ぎちゃって、南の島に引越して、リタイア生活しようかと思っているんですよ。ほんとそんなことばっかりでぇ。びっくりするほど、人生変わりました」
さっき、打ち合わせをしている様子ではそんな感じではなかった。男は真顔で聞いていたけど、もともとは水商売かガテン系のような感じだった。本当に儲かっているふりをしたいなら、ホテルのラウンジとかで打ち合わせをした方がいいと思う。その金が出せないくらいだから、多分、ジリ貧なんだろうと想像する。
俺は2時間時間を潰したから、その場を後にした。その男がどうなったかは知らないけど、もしかしたら、マルチ商法を始めたかもしれない。
俺の知っている話だと、お年寄りに親切にして信頼されてから、高額な商品を売りつける展示会に連れて行って、商品が売れたらキックバックをもらい、家を買ったシングルマザーがいた。一部のお年寄りは破産してしまったけど、彼女は自分は頑張ったと思っているだろう。身内に先立たれて、かなり不幸な人生を送っていた人だった。自分が不幸だと、悪いことをしていても、罪悪感を感じなくなるものかもしれない。彼女に罪の意識はないだろうと想像する。
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