夕焼け

これはネットで読んだ話。


◇◇◇


私は部屋で洗濯ものをたたんでいた。

あ、夕方だ。そろそろ子どもを迎えに行かなきゃ。息子の貴之は外遊びが大好きで、友達と遊びに行くと夕方まで帰ってこない。そろそろ日が暮れてくる。最近は物騒だから、ちょっと近所を探しに行こう。

   

私は30歳の主婦。主人と息子の3人暮らし。


貴之はまだ6歳。事件に巻き込まれたり、事故に遭うかもしれない。まだ小さいから、判断力もないだろう。


最近は誘拐も多い。うちは身代金を支払うほど余裕はないけど、そういう家庭はどうするんだろう。


ひとりっ子だから余計に心配だ。私は外出着に着替えて、玄関を出ようとする。すると「行っちゃダメ!どこ行くの!?」と、怒鳴られた。振り返ると中年の女の人が立っていた。灰色のトレーナーの上下。鬼のような形相だ。知らない人。わるいけど、すごく不細工。


誰?この人?


知らない女の人だ。誰だろうか。


「どなた?」と、尋ねてみる。


その人がわめいている。


「私は出かけなきゃいけないの!離して!」


私は力ずくて女の人を振り払う。そしたら、2人で玄関に倒れてしまった。私はドアのノブに頭をぶつけてしまった。女の人が悲鳴をあげる。私の頭がパックリ割れて。血が染み出す。額を血が伝い始める。


私は「痛い、痛い」と言って泣く。

「大丈夫!?」

 その人も叫ぶ。あんたのせいじゃない。私は思う・・・。

 それより、貴之が心配だ。私が迎えに行くと思って、暗くなるまで遊んでいるかもしれない。私は血だらけになってもドアを開けようとする・・・。女の人は半狂乱になってしがみつく。

「そのケガでどこ行くの?やめて!」

 私は女の人を振り払って出て行こうとする。傍にあった傘で叩いた。傘を取られそうになったので、思い切って傘の先でその人の目を突いた。


「ギャー‼」


 悲鳴を上げながら目を抑えている。手の隙間から血が流れている。

「どうしよう・・・」

 でも、正当防衛だ。頭の傷を見たらわかってもらえるはず。

 私は玄関を飛び出した。


「待って!!」


 後ろから叫び声が聞こえる。


 私は玄関を飛び出して走る。

 でも、知らない街並みだ。家を出て正面はツムラさんの家だったはずなのに、知らない変な家が建っている。外に出ても、見たことがないような車が走っている。知っている物は何もない・・・。


「キャー!」


 私を見た人が悲鳴を上げる。


「大丈夫ですか?血が出てますよ」


 私は気にせず歩き続ける。

 そのうち、人が集まって来た。

 みんなで私を押さえつける。


「子どもが待ってるの」


 私は叫んだ。

「助けて!!!誰か!!!」


 私は暴れた。そのうち、警察が来た。

 そして、救急車が呼ばれて病院に運ばれた。

 

 手当が終わると、頭に包帯を巻かれて、警察の人と一緒に待合室で座っていた。

 

 知らない男の人が来て、近くで泣いていた。

「母さん、何やってるんだよ・・・美代子の目、失明するだろうって・・・何であんなことしたんだよ。自分がしたことわかってる?」

「あなた、どなた?」

「貴之だよ」

「貴之はまだ6歳よ」

「俺はもう58だよ。母さんボケてるんだよ」

 その瞬間、私は思い出した・・・そうだった。私ボケてるんだって。


 


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