W不倫
これも俺がネットから拾って来た話だ。
ある夫婦がいた。
旦那はごく普通のサラリーマン。
収入はそこそこで、酒乱でもなく、暴力をふるうわけでもない。
多少駄目なところはあるが、決して悪い人間ではない。
奥さんは、結婚が早かったからまだ30代後半。
昔、美人だったというのが自慢だった。
何を根拠に言うのかはわからないが、スカウトされたこともあるとか・・・。
でも、東京に住んでいる女性は、だいたいスカウトされたことがあると聞く、、、大半が成人向けだけど。
夫婦には2人の子供がいて、どちらも健康に育っていた。
上は高校生、下は中学生。
上の子は高校を卒業したら、美容師になりたいと言っていた。
下の子は看護師志望。
どちらも堅実なタイプだ。
奥さん(Aさん)は、数年前からスーパーのレジのパートをしていた。
実は、仕事を初めてすぐに、スーパーの店長と不倫関係になった。
店長は×1だった。
仕事が忙しすぎて、家庭内が不和になり離婚したそうだ。
一人暮らしだった。
店長はマメですぐLineの返事をくれて、Aさんがおしゃれをしていると、気がついて褒めてくれる。話が面白くて明るい人だった。
夫は家で何も喋らない。Aさんが、手の込んだ料理を作っても、美容院に行っても気がつかない。Aさんにとっては、店長が心の支えだった。
だから、Aさんは旦那が早くあの世へ行ってくれたら、といつも思っていた。
Aさんは犯罪にならずに旦那を亡き者にする、あらゆる方法を試したそうだ。
まず、呪いをかけてみた。有名どころでは、藁人形。神社に丑の刻参りをするのは無理だから、手近なところで庭の木に釘を打った。後はひたすら呪うとか、縁切り神社や寺にお参りするとかしていた。
食事も塩辛いものや揚げ物ばかり出した。それに酒も毎晩飲ませた。
旦那は病気になることはなかったけど、ある晩、子供たちが外出している時に「ちょっと話があるんだけど」とAさんに言った。
「実は・・・離婚してほしいんだ」
「え、どうして?」
Aさんは嬉しさを隠して尋ねた。
「実は・・・もう一緒にいるのがしんどくて」
「どういう意味?」
「君はすぐかっとなるし・・・俺のことはもう好きじゃないだろう」
「・・・あなたもそうなんじゃないの?」
「そうだね」
「じゃあ、、、離婚してもいいわ。一緒にいてもお互い空しいだけだし」
Aさんは、その場で承諾した。
Aさんは慰謝料なしで離婚に応じた。
家は旦那名義になっていたが、妻子に譲ることになった。
それと、子供たちが社会人になるまでの学費と養育費も受け取れることになった。
Aさんは意気揚々として、スーパーの店長に言った。
「私、離婚が決まったの」
「へぇ。何で。俺たちのことがばれた?」
「いいえ。そうじゃないんだけど、急に離婚したいって言われて」
「離婚なんかして、これからどうするんだよ。おまえ、パートの稼ぎしなかいだろ?」
「え、だって、店長結婚してくれるんじゃ?」
「するわけないだろう。おまえみたいなおばさん。そろそろ別れようと思ってたのに・・・」
Aさんはあまりのショックに言葉が出なかった。
騙された・・・。
店長はAさんと遊びで付き合っているだけで、将来の約束をしたことなんてなかったのだ。Aさんはただ勘違いしていただけだった。
しかも、旦那も会社の若い子と不倫していたようだ。
Aさんと離婚して、すぐに別の子と再婚したそうだ。
「これからどうやって生活しよう・・・」
Aさんは店長を呪った。
しかし、呪いなんか効きやしないのは、旦那の時で身に染みていた。
何とかして復讐しようと思った。
まず、Twitterにアカウントを作って、勤務先のスーパーで買った惣菜に髪の毛が入っていたとツイートした。それに、店員が感じが悪くて、レジでもたもたしていたら、舌打ちされたと書いた。
そのツイートは誰もリツイートしなかった。
地域が限定されていたからだ。
Aさんは別の方法を思いついた。
総菜コーナーで売れ残った総菜を、ゴミ箱からこっそり拾って来た。
それを家に持って帰って、死んだ蠅を入れて、ラップをし直して職場に持って行った。そして、翌日、同じ総菜を一パック盗んで、総菜コーナーに並ぶ前のワゴンに乗せてあったパックと入れ替えた。担当の人が後で値札をつけて、売り場に出すから、ラベルも今日付けだし気が付かれないはずだ。
防犯カメラは万引き防止のために、店の中にはあったが、バックヤードにはなかった・・・。Aさんは、買った人が騒いでくれたらいいと思っていた。
そして、次の日、涼しい顔をしてスーパーに出勤した。
すると、普段そんなに喋ってないおばさんが、嬉しそうにAさんの所に寄って来た。
「Aさん、知ってる?
うちのスーパーがTwitterで炎上してるんだって・・・」
「え?知らない」
AさんはすぐにTwitterを開いた。
『今日、〇〇スーパー〇〇店で買った総菜にハエが入っていた!
もう少しで食べちゃうとこだった!
ハエが入るってどういうことやねん!
厨房も絶対汚い!やばい!!』
すごい勢いでリツイートされていた。
1万リツイートもされたいた・・・。
Aさんが勤めてるスーパーは大手だったから、世間も興味を持ったのだろう。
Aさんは自分が注目されているみたいで足が震えた。
もっと、リツイートされればいいのに・・・
店長もきっと困ってる。いい気味だ。
しかし、Twitterを見ている人ばかりじゃないから、スーパーには普通に客が来ていた。
効果があったのは、数日後だった。リツイートは3万を超えて、なんとテレビでも取り上げられたのだ。スーパーには苦情の電話が殺到した。電話を取っても取っても次から次へとかかって来て、通常業務に支障がでるほどだった・・・。Aさんも手伝ったが、楽しかった・・・久々に充実していた。Aさんは、笑顔で「申し訳ございませんでした・・・」と謝った。
レジにいると、お客さんから「お宅のスーパーの総菜にハエが入ってたんだってね」と言われた。「でも、あれは下請けの会社が作ったものなので・・・うちの厨房が汚いわけじゃないんですよ」Aさんはお決まりの返事をした。
下請けの会社の社長が来て、泣きながら土下座して謝っていた・・・。
「取引停止にしないでください。従業員もいるので・・・」
それはちょっと気の毒だった。
Aさんは、傍らで萎れて行く店長を見ているのが楽しかった。店長は激務で早朝から仕事に来て、朝6時出勤、退勤は22時だった。Aさんと不倫している時は、休みの日に会っていたのだ。店長は、そのうち、うつ病になって休職してしまった。
しばらくして、新しい店長がやって来た。
40くらいで、体育会系ぽいイケメンだった。
Aさんはその店長とまた仲良くなった。
スーパーは女性が多いから、社内恋愛が起きやすいそうだ。
Aさんは離婚後、どうやって家計をやりくりしていたかは知らないが、出会いには困らなかったらしい。前の店長は休職したまま退職したそうだ。Aさんは復讐を果たして満足だったのかはわからない。
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