純愛
俺は不倫ばっかりしているくせに、純愛に憧れる。
俺が純粋だったのは高校生くらいまでだ。
あの頃は、見返りを求めていなかった。
今は、相手のバックグラウンドや年収などが頭の片隅にちらついて、それが余計に俺を恋愛から遠ざけている。
つくづく女運のない人生だったと思う。
小学校高学年くらいまでは、女の子とも鬼ごっこをしたりして遊んでいたが、中学になるとほとんど喋らなくなった。
高校は男子校。
学生時代、バレンタインデーにチョコレートをもらったり、ラブレターをもらったことはなかった。
基本、女子から嫌われていたからだ。
学生時代は恋愛をする機会がまったくなかった。
俺には青春がなかったと思う。
でも、そういう人は多くないだろうか?
俺ぐらいの世代で、高校時代に彼女がいた人は少ないんじゃないだろうか?
なら、彼女ができた時が青春なんだろうか。
そう考えると俺にはまだ青春が来ていない。
というか、もう来ない。
恋する喜びを一生知らないまま死んでいくのは何だか寂しい。
俺はピュアな女の子と出会うにはどうしたらいいか考えた。
女は大学くらいから、相手が将来どのくらい稼げるかを計算してからつきあうようになる。そうでない人は稀だ。例えば、女が東大で彼氏が偏差値50くらいの大学っていうのはほぼない。それに、東大卒の女がフリーターと交際なんて聞いたことがない。精神的に病んでいるなどならあるかもしれないが。
そうなると18歳までの子と付き合えば、俺自身を愛してくれるんじゃないか・・・。まさに純愛だ。
しかし、50代のおっさんが10代の子と出会うチャンスなんて、普通に生活していたらない。
俺が子供から大人まで参加できる、スポーツのサークルに入ることに決めた。
平日夜。仕事の後でさわやかに汗を流す・・・。そして、恋愛。
これこそまさに青春だ。
小、中学生はちょっといる。
本気でやりたいなら、部活に入るだろうが、塾があるから片手間にやっているせいで、恐ろしく下手だ。
おっさんは、おっさん同士で固まり、俺が独身だとわかると、おばさんには色目を使われる。女子中学生はいたけど、全然かわいくなかったから、1回しか行かなかった。
次にやろうと思ったのは、完璧にJKに出会える個別指導塾の先生だ。週2回から入れる。科目は英語。俺は昔TOEICのスコアが900点以上あった。
面接で自分より年下の男に、「何で今から?」と言われる。
「定年後は教育関係の方をやってみたくて」と言うと、納得してくれたらしい。そして、失礼ですがお子さんはいるんですか?と聞かれる。
「いません」
「あ、そうですか。すいません。いらしたら、受験のことなんかもご存知かと思って」
人が足りなかったみたいで、とりあえず採用された。
ワクワクして出勤したら、待っていたのは冴えないメガネ男子だった。それでも、そのうちJKを教える機会があるかもしれないと思って、辛抱強く続けていた。確かに、老後は自宅で英語を教えるという選択肢もなくはない。フランチャイズの塾が英語の先生を募集しているからだ。そのレベルはすごく低かったと記憶している。
その塾にはかわいいJKもいたが、俺には男しかブッキングされなかった。高給取りのサラリーマンが時給1500円で塾講師なんかやるはずがないから、目的を見透かされていたんだろうと思う。
俺はメガネ男子と仲良くなった。それで塾終わりに晩飯をおごったりしていた。その子に、女子高生紹介して欲しいと頼むと「俺に彼女がいないのに、そんな知り合いいるわけないじゃないですか」と言われた。彼はみるからに陰キャだったから仕方なかった。
10代の子と喋るのは楽しかったから、俺は調子に乗ってしまった。
そしたら、親から塾に苦情が来て、俺はクビになってしまったのだ・・・。
人生でクビになったのは初めてだった。
でも、いいんだ。今でも彼は俺の数少ない友達だから。
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