ペンフレンド

 俺が子供の頃はまだインターネット環境がなかったから、海外から手紙が来るのはがすごく楽しみだった。俺は国際文通をしたくて、英語圏の人に手紙を送ったけど、2-3回やり取りしたら返事が来なくなってしまった。英語力が足りな過ぎて、うまい文章が書けなかったせいだと思う。下手な英語につき合うのは根気がいるからだ。


 みなさんも、英語圏の人と文通したいという気持ちはあるだろうか。

 今時、文通なんて流行らないと思うだろうけど、実は今もある・・・。


 Write●Prisoner.comというサイトがあるんだ。

 タイトルでピンとくる人もいるかもしれないけど、囚人と文通するというものだ。

 このサイトの閲覧数は相当多いから、若い美男美女の囚人には大量の手紙が来ていると思う。囚人だから時間があるだろうと思いきや、返事が来ないかもしれない。

 

 家を教えるのは勇気がいるから、私書箱を開設すれば家バレせずに、英語で文通できるんじゃないかと思う。メールでも連絡できるみたいだが、あちらはネット環境がないから、プリントアウトして渡してくれるらしい。考えただけでちょっとワクワクする。


 実は俺の友達(A君)でこれをやってた人がいた。ちょっと怖いもの見たさというか、冷やかし半分だったと思う。それで、かわいい白人女性と出会えて、あわよくば・・・という、下心もあっただろう。連絡するのは若くてきれいな女の子ばかり。当然なのかもしれないけど、返事は全く来ない。たまに差し入れが欲しいとか、お金頂戴というのはあったそうだ。

 

 そいつは手紙に自宅の住所を書いていた。本場アメリカの人も家の住所を書いているから、日本までわざわざ来るわけないとそいつは思ったらしい。

 

 長年文通をしていて、囚人の心を掴めるようになっていた彼は、ある囚人の女の子(Bさん)と仲良くなった。23歳でかわいい子だった。俺も写真を見せてもらった。彼は30代後半だったから、相手も恋愛目的なんかじゃない別の理由があったと思った。しかも、3年後に出所して来るらしい。


 そいつは、日本に来て英語会話教師になればと誘っていた。

 みんなで「やばいんじゃないか」と言ったけど、A君は聞く耳をもたなかった。

 そしたら、予定より早く出所できることになったということだった。A君は日本に来るためのチケットをわざわざ買ってあげていた・・・普通だったらそのチケットを換金して逃げるだろう。結局、彼女は犯罪歴があるから来れなくなってしまい、A君が自らアメリカに会いに行くことになった。


 白人女性がいいなら、外国人のいるお店に行けばいいと思うのだが、彼は真面目な性格で本気でBさんを更生させたかったようだった。


 犯罪を犯す人の思考回路は短い。

 何が得かをじっくり考えられない。

 よくよく考えれば犯罪ほど割に合わない金儲けはない。

 俺がその子だったら、A君からじわじわ搾り取って、長期的に金をださせるだろう。

 多分、その子には男がいるんだ。

 そして、やって来たA君を・・・バン!俺たちは、そのうちAさんの訃報が届く気がしてハラハラしていた。


 Aさんはアメリカに行って4日後くらいに、俺にスカイプで連絡してきた。

 

「そっちはどう?」

 俺は聞きたいことが山ほどあった。

「うん。もう帰ろうと思ってる・・・」

「どうだった?Bちゃん」

「写真と全然違ってさ。騙された。異様に腰の大きい子で、土偶みたいな体型なんだよ」

「出会い系、あるあるだね。やれた?」

「いやぁ・・・家族と住んでて、妹とルームシェアしてるから」

「え、そんな狭いとこすんでんの?」

「うん。トレーラーだから。すごい貧乏で・・・車、持ってなくてさ。会ったその日に、車屋に連れて行かれて車買わされた」

「え!?いくら?」

「100万くらい」

「へぇ。太っ腹」

「笑い事じゃないよ。今日はショッピングモールに服買いに行かされて。こっち来てもう200万くらい使ってる」

「うぁ~。そんなに?」

 他人事ながら笑えた。

「あの一家は俺をサンタクロースだと思ってる」

「もう帰って来れば?」

「うん」

 スカイプで見たA君はげっそりしていた。

  

 その後もしばらくA君はBちゃん一家に経済的に援助していたそうだ。

 妹の学費とか・・・。


 Bちゃんはそのうちまた刑務所に入った。次は禁固20年だった。 

   

 

 


 

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