霊が見える

 これは前の会社に派遣で来ていた、Aさんから聞いた話だ。

 その人は妊娠して正社員の仕事を辞めて、子供が小学生になってから派遣で復帰したそうだ。


 子供(B君)が2歳くらいの頃、Aさんの実父がなくなった。

 おじいちゃんはその子をとてもかわいがっていたそうだ。

 Aさんは実家の近所に住んでいて、よく行き来していたそうだ。


 おじいちゃんは入退院を繰り返していて、Aさんは病院にも実家にも毎日行っていた。その時は、B君も一緒に連れて行ったそうだ。


 B君は幼なすぎて、おじいちゃんが亡くなったことがよくわかっていなかった。


 葬式の時は、Aさんが「今日でおじいちゃんとお別れなんだよ」と言ったが、B君はおじいちゃんの写真を見て指さして喜んでいた。


 相変わらず、B君は「おじいちゃん大好き」と言っていたから、Aさんは、「おじいちゃんも大好きだって」と言ってごまかしていた。


 すると、葬式が終わって3日後くらい経って、B君は「そこにおじいちゃんがいる」と指さした。Aさんはいくら大好きな親でもぞっとしたそうだ。そして、B君はプラレールを取り出すと、見えないおじいちゃんと遊び始めた。


 Aさんには全く見えないし、B君は一人で遊んでいるだけだった。


 念のためスマホで写真を撮っても何も映らなかった。


 それまで、B君は一人遊びをしなかったそうだが、おじいちゃんが亡くなってからは、幽霊と遊ぶようになって、Aさんは家事をしたりできるようになったらしい。おかげでずいぶん助かったそうだ。


 きっと、おじいちゃんが育児を手伝ってくれているんだ、とAさんは思ったそうだ。B君が幼稚園に入った頃には、おじいちゃんの話はしなくなった。


 子供はあの世に近いから、霊が見えるらしい。

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