亡霊
俺の家には何かが住んでいる気がする。
関西に旅行に行ってからというもの、何かが俺に付いて来ている。
田舎道で小学生の女の子に追いかけられたその夜から、その子がいつも俺の傍らにいる。
リビングにいると、ふとチリンという鈴の音がする。
あ、あの子がいるんだ。
俺は線香を炊いて、お経のテープを流す。
「お願いします。お帰りください」と俺は拝む。
この時間がもったいない、と心の片隅で思っていると、その子が姿を現すことがある。だから、俺は無心で祈る。
俺はあの田舎の交番に電話を掛けた。
「変なことをお聞きしますが、前に、あの辺で交通事故か何かで、小学生の女の子が巻き込まれて亡くなったことはありませんでしたか」
「どうしてですか?」
「この間、旅行に行った時・・・」
俺はその経緯を話した。
「交通事故じゃなくて、あの近くに住んでいた女の子が暴行されて、殺害された事件がありました。あれ、犯人が捕まっていないんですが。2010年に公訴時効が廃止されたので・・・。これも何かのきっかけですから、お話を聞かせてもらえませんか」
俺は承諾した。女の子の破れた靴や汚れた足を思い出した。
「でも、私は何も知りませんが・・・」
あの子は犯人が誰かを知らせたかったんだろうか。
「君を殺した犯人は誰?」
俺はつぶやいた。
「犯人教えて」
俺はその夜、夢を見た。
ランドセルを背負った女の子が男に追いかけられて走っていた。
鈴の音がする。
ランドセルについたお守りの鈴の音。
チリン、チリン。
男が女の子に追いついて、押し倒された。
そして、木陰に引きずられて行く。
男の顔は見えなかった。
女の子は逃げようとしたが、後ろからものすごい力で羽交い絞めにされて逃げられなかったんだ。
女の子は地面に押し倒される。
男はランドセルを取り上げて地面に投げつけた。
男は馬乗りになって、女の子を何度も殴りつける。
やがて、女の子は動かなくなった。
俺は男の顔を見ようとするが、どうしても見えない。
服装は上下薄緑色のような作業服だ。
なぜ、仕事着なんだろう。
その辺には車で来ていたのかな・・・。
会社の用事でこの辺に来ていて、それで・・・。
俺は、警察が来た時に「こんな夢を見ました」と言った。
「顔は見えませんでしたが、体つきの感じから40代くらいまでじゃないかと思います」
警察の話だと、女の子は暴行された後に、池に捨てられたらしい。
それでしばらく見つからなかったけど、体が腐って浮かんできたらしい
「怪しい車の目撃情報はなかったんですか」
「ええ。それがなかったんですよ」
「白い車でした。会社の車です。それに乗ってあの辺に行っていたんです」
警察は納得していないようだったが、いろいろと聞き取って帰って行った。
その後、音沙汰はなかった。
その子の事件は解決していない。
だから、その子はまだうちにいる・・・。
チリン、チリンと音がする。
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