ホラー・ショート・ストーリーズ

保育園

　これは前の職場で働いていた派遣の人から聞いた話だ。

　その人をAさんとする。

　Aさんは出産前に仕事を辞めてしまい、子供が生まれてから派遣で働き始めたそうだ。最初は、なかなか仕事を紹介してもらえなかったとか。

　ようやく、仕事が決まっても認可の保育園はいっぱいだから、無認可保育園に預けることにしたそうだ。確か１時間1500円くらいしたので、ほとんど手元に残らなかったらしい。なぜそこまでして働きたかったのかというと、近所のママ友と合わなかったからだそうだ。その人は出産までは、バリバリ働いていた人だったから、専業主婦が合わなかったのだ。

　そんな理由で預けられて、子供がかわいそうだと思うが、苛々して子供に当たったりするようになるともっと悲惨だ。その人は、子供が病気で休むと言うことがなかったので、俺としてはどっちでもよかった。

　Aさんが利用していた無認可保育園は、古い建物を間借りした託児所のようなところで、いるのは施設長と保育士１名だけだったそうだ。朝は施設長がいるが、夕方に迎えに行くと保育士１名しかいない。しかも、保育士はいつも違う人だったそうだ。保育士派遣もあるから、直接雇用ではなかったようだ。

　Aさんは、その施設に子供を預けるのは怖いなと思っていた。

　ある時、迎えに行くと、20代の男の保育士が出てきたそうだ。

　ひょろっとした感じで目がねを掛けていて、子供好きという感じには見えなかったらしい。話していても変な人だという印象で、ロリコンなのではないかという感じがしたそうだ。保育士１名だと、携帯で写真を取ったりしていても誰も見ていない。

　保育園によっては監視カメラが付いていて、保護者がネットで様子を見られるところもあるようだが、そこはなかったそうだ。

　Aさんはそこが近所にあって便利だったが、何かあってからでは困るので、やめることにした。

　月契約だったから、月末までは我慢した。

　保育園をやめて、かなり経ってからのことだ。Aさんの携帯に警察から電話があった。

　〇〇保育園に勤めていた男が園児たちの猥褻な写真や動画を撮っていたが、そちらのお子さんも含まれているのではないかというものだった。

　警察で見せてもらったところによると、確かに、Aさんの子供の写真も混じっていたそうである。

　男は保育士の給料が安くて生活が苦しかったので、秘蔵コレクションをマニアに販売し、それで発覚したそうだ。　

　子供との出会いを求めて、そういう仕事をする輩もいるということだ。

　純粋に子供が好きでやっている人と、そうでない人の区別がつかないので難しい問題だと思う。

　Aさんは、今は他の会社で社員になって働いている。子供は今も別の無認可保育園に預けているそうだ。