美少年
これは知り合いから聞いた話だ。
その人の友達(Aさん)は少女漫画が好きだったそうだ。
女性なら、誰もが一時期、少女漫画にはまる時期があるものなんだろうか。
俺にはわからない。
少女漫画のキャラクターと言えば、女の子は目がぱっちりでかわいい系、男は華奢でジャニーズアイドルのようなルックスと相場が決まっている。
Aさんは自分の理想の男を探したが、現実は厳しかった。
小学校では、バレンタインデーに好きな男子にチョコレートを渡したが、手紙をクラス中に回されて恥を書いた。中学校でも好きな男子にラブレターを書いたが返事をもらえなかった。
高校の頃には、電車ですごいイケメン高校生を見つけてラブレターを手渡したが、次に会った時は無視された。
どの男も性格が悪かったんだろうと思う。普通だったら「他に好きな子がいる」とかお断りのコメントを言いそうなものだ。
一方のAさんの容姿はと言うと、100点満点で30点くらいだったそうだ。容姿に対する評価っていうのは、主観的かというとそうでもない。アイドル好きでない人でも、身近に乃木坂みたいな子がいたらやっぱり好きになるだろう。
カップルの容姿というのは、大体釣り合いが取れているものらしいから、イケメンの彼女は大体美人だ。イケメンが普通の容姿の子と付き合う機会があるとしたら、男の性格が大人しいとか、高校から付き合ってる等だと思う。
AさんはSNSである男の子(B君)の存在を知った。初めて見た時、B君は16歳だったそうだ。Aさんは21歳だった。
自閉症だがピアノが物凄くうまくて、ネットに動画を公開していた。
しかも、見た目がAさんの理想通りの美少年だった。色白で華奢でアイドルのような顔立ちだった。どうしてもB君に会いたくなり、コンサートなどはやらないのかとDMを送ってみたが、そんなに有名ではないので、老人ホームなどに慰問に行くくらいだと知らされた。
次回は〇〇という特別養護老人ホームで開催するが、オープンイベントなので、一般の人も見学できるということだった。
詳しく書くのは避けるが、Aさんの家からBくんの家までは、電車で大体2時間くらいだった。Aさんは花を持ってコンサートに出かけた。そこで、あちらの母親にも挨拶した。
Aさんは、事前に自閉症の人とのコミュニケーションについての本を何冊も読んで勉強して行き、B君に話しかけた。すると、普段は人とうまく会話できないB君が返事をした。
これにはB君のお母さんも感激したそうだ。
それから、AさんはB君の追っかけになった。
もちろん、素人のB君の追っかけなんか一人もいなかった。
AさんはB君のコンサートに行ったことをツイッターにあげた。
B君が有名になってくれたらいいと思ったからだ。
Aさんは元々、BLやアイドルのツイートをしてたので、フォロワーが2000人くらいいた。その人たちがB君の見た目を気に入ってリツイートした。
お陰で、他にもB君の追っかけをする人が出てきた。
素人の男の子に追っかけがいるなんて、ちょっと異様な光景だったが。
Aさんは、B君の両親に気に入られて家にも招かれるようになった。そのうち、マネージャーのような仕事までするようになり、B君を売り込んで仕事を取ってくるようになった。B君のお母さんは、そのうち、Aさんに付き添いなどを頼むようになった。多少はお礼もしていたが、交通費や食事代を考えると赤字だった。AさんはB君が好きだったので、それでもかまわなかった。
Aさんは、B君と2人の時に、『好きな人いる?』と聞いてみた。A子さんは散々尽くして来たから、自分を好きだと言ってくれると思っていた。
しかし、返って来たのは別の人の名前だった。B君は自閉症だが、知的障害ではないので、女性の好みは健常者と変わらなかったのだ。
B君は追っかけの中で一番綺麗な人を好きだと言った。
そして、B君は意中の人と交際を始めた。
交際相手のCさんは、2人の関係をA子さんに相談した。Aさんは2人の仲を裂くために、わざと「自閉症の人も普通の人と変わらないよ」と言った。
B君はCさんと2人でいる時に、パニックを起こして、2人は破局してしまった。
やはり、自閉症の人とのコニュニケーションは、慣れている人でないと難しかったからだ。
しかし、Aさんはその後もBさんを独占することは出来なかった。また、B君に別の恋人ができたからだ。
みんなは、意外に思うかもしれないが、B君はすごくもてていた。
とにかく顔がよかったからだ。
眼光もするどく、誰もが認めるイケメンだった。
しかも、ピアノが得意というのもさらにポイントが高い。
自閉症の人は、容姿に優れている人が多いと言う話もある。
ご家族の方には不快かもしれないが、実は俺も思い当たるふしがある。
小学生の時の同級生のお姉さんが自閉症で、すごい美人だった。
俺は、その人のことをしばらく好きだった。
B君は他の女性と交際しているが、Aさんはいつか振り向いてもらえるかもしれないと思って、今でもマネージャーをやっているそうだ。
B君は今ではテレビに出たりすることもある。
だから、Aさんにとっては、以前よりもっと遠い存在になっているのかもしれない。
しかし、Aさんは諦めていないそうだ。
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