承認欲求(エロ)(おススメ度★)

 *一部性的な表現があります。


 人間誰しも承認欲求がある。

 俺ですら以前はブログをやっていたことがある。

 あまりにも反応がないので、そのうち記事を書かなくなり、長年放置していたら、サービス自体がなくなってしまった。


 人によっては、SNSの反応がないと自分を否定されたような気分になってしまうようだ。

 それで、わざと人の気を惹くような投稿をしたりするようになる。


 人間は他人から無視されると参ってしまう。誰かと喋りたくて仕方ない。嫌われても、いじめられてもいいから、かまって欲しくなる。


 これは人から聞いた話だ。

知り合いの知り合いに、もと風俗で働いていた女A子がいた。


 A子は子供の頃、友達が1人もいなかった。

 友達が1人もいない状況というのは、普通の人にはわからないかもしれないが、人とうまく会話ができなかったそうだ。


 小学校、中学校では、学校に行っても1人も話す人がいなくて、ずっと居づらい思いをしていた。すっかり孤立していたから、わざと聞こえるように悪口を言う人や、あからさまな仲間外れ、嫌がらせもあった。


 A子は習い事もしていなかったから、近所や他所にも友達がいなかった。


 兄妹は兄だけで、兄は幼い頃からA子をいじめていた。

 機嫌が悪いと蹴ったり、罵倒して来る。

 それでも、A子は構ってくれるのが嬉しかった。


 兄はかっこよくて、勉強もスポーツもできてもてていたから、A子にとっては自慢だった。


 自分はその兄のたった1人の妹なのだ。

 それだけが、唯一の救いだった。


 両親もA子のことをいつも「馬鹿」だと言って否定するだけだった。

 誕生日などは兄だけ祝って、A子には何も買ってやらなかった。


 A子には夢があった。それは、兄のお嫁さんになることだった。

 だから、まずは兄に好きになってもらい、恋人になって、そして兄にプロポーズしてもらいたかった。


 高校生になったA子は兄を誘惑するようになった。

 両親がいない時は、わざとパンツとTシャツだけで家の中を歩き回った。

 Tシャツの下はノーブラで、胸を揺らして兄を刺激するようにした。


 兄は同じ家で半裸の妹と二人っきりになると、さすがに気になって部屋に呼ぶようになった。


 それから兄は優しくなった。優しくなったと言ってもただ虐めなくなった、というだけだったが。


 兄は地元でモテていたから、高校2年になると彼女ができた。

 そして、両親がいない時に、彼女を家に呼ぶようになった。A子には「今日は彼女が来るから、お前もどっかいけよ」と言って追い払うようになった。


 A子は兄を失ったことに耐えられなくて、家出して東京に行った。

 両親はA子を探さなかったから、A子はそのまま東京にいついてしまったそうだ。

 まだ16歳だったが、年を胡麻化して風俗で働くようになった。

 風俗は寮があったからだ。


 A子は若いということで、店で人気者になった。

 同僚も訳アリの人が多いので、いじめに遭うことがなくなった。

 客もついた。


 誕生日にプレゼントをくれる人や祝ってくれる人が出て来た。

 A子は嬉しくてたまらなかった。

 中には結婚して欲しいという人までいた。


 A子は実家に連絡したくないので、入籍はできなかったが、お客さんの一人Bさんと同棲するようになった。

 しかし、最初は優しかったBさんも、半年もするとA子に飽きていった。


 A子はそれに気が付いて、Bさんの家を出て、また風俗に戻った。

 こういうことを何度も何度も繰り返していた。


 同棲相手が80くらいのお爺さんだったりすることもあった。

 A子にとって重要なのは、相手にとって自分がどれほど価値があるかということだった。普通の男は浮気をするが、80歳のおじいさんはA子を孫のようにかわいがって、大切にしてくれた。


 おじいさんは、しばらくして寝たきりになり施設に入ったが、A子は毎日会いに行った。だから、おじいさんが亡くなった時は、遺族の人たちがA子に世話になったからと言って少し現金をくれ、いろいろ相談にも乗ってくれた。


 A子は次第に人を信じられるようになっていった。


 A子は長年風俗産業に従事して、すでに35くらいになっていた。

 すでに、10人くらいの男と住んでは別れてを繰り返していた。


 ある時、たまたま寝たきりの男性の相手をするために家に呼ばれたことがあった。その人はA子が初めてだった。A子に夢中になって初対面で結婚して欲しいと言うので、A子はここで初めて結婚を決意した。


 普通の女性なら夫と一緒に旅行したいとか、子供と遊んで欲しいと思うだろうが、A子にとっては、そんなことより自分だけを見てくれて、他の女と比べない男が一番だったのだ。


 A子は20年ぶりに実家に帰って、戸籍を抜けるために分籍というのをやった。

 両親の対応は冷ややかで、「今更帰って来てもお前にやるもんなんかない」と言われたそうだ。


 A子は両親に言われたことは、まったく気にならなかったそうだ。

 兄にも会わず、どうしているかも聞かなかった。


 A子さんは、その後は専業主婦になって、結婚した男性との間に2人の子供がいるそうだ。風俗で働いていたとは誰も気が付かないほど、ごく普通の奥さんになっているということだった。彼女は今は埼玉の某市で暮らしている。

 

 俺は彼女の気持ちがよくわかる。 

 俺も恋人を誰にも取られたくないから、社会的に隔離したいと思うし、俺以外知らないでいてほしいと思う。普通はそういう願望を両立できない。


 普通、女は外に出て行きたがる。

 かわいければ男が寄って来る。


 旦那の顔は知らないが、そもそも出会いがないのだから、他の女に取られることはないだろう。


 彼女はまさに理想の相手を見つけたのだ。

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