ビルオーナー(おススメ度★)

 みんな銀行と言うとエリートだとか、高収入、いい就職先のイメージがあるだろうか。


 普通の人にとっての銀行と言えば、預金を預けておく所であるが、実質的には貸金業で儲けているわけだ。貸金業にいいイメージがある人はいないだろうが、銀行員にも貸し出しにノルマがあって、大変らしい。

 だから、そんなに必要ない人や会社にもお金を貸してしまうというのは、よく聞く話かもしれない。


 銀行員は非常に恨まれている場合もある。融資が実行されなかったから、会社が倒産してしまったりする。


 バブルの頃は、都内で個人商店を営んでいたような人の所に、銀行員が営業に行って、「こんなに便利な立地なら、ビルやマンションを建てたら儲かりますよ」などと言って、何億円も融資していた。

 しかし、実際建物が出来上がってみたら空室が多くて、ローンを返せなくなってしまったというのはよくある話だ。


 オーナーが金を返せなくなると、土地と建物を手放したり、最悪自殺してしまったり、ということが起きていた。厳しいノルマや、与える影響の大きさに耐えられなくて、やめてしまう行員もいるから、割り切らなければ仕事を続けるのは難しいのかもしれない。


 下記は人に聞いた話だ。


 オーナーが借入金を返済できなくなって、競売にかけられたビルがあった。

 オーナーをAさんとする。


 オーナーはまだそのビルに住んでいた。

 どこかに引越すにも金がかかるからだ。

 

 競売にかけられて落札したにも関わらず、オーナーはそのビルに居座り続けた。

 落札した人は何度も書面で催促したが、出て行く気配がなかった。

 それで、裁判所に強制執行を申し立てて、執行官と一緒に物件に出向いて、オーナーに〇月〇日までに明け渡すようにと伝えた。その頃になっても、引越しましたという連絡がないので、強制的に明け渡しを行うことになった。


 明け渡しの時は、執行補助者という業者が荷物を運び出して、居座っている人を追い出す。そして、鍵を交換して入れなくするそうだ。


 オーナーの心情を考えただけでも胃が痛くなるが、当日ビルに行ってみると、入り口に鍵がかかっていた。鍵屋を呼んで開けて中に入ると、オーナー一家がそこで無理心中をしてしまったそうだ。


 買った人Bさんは自分で使う予定だったが、オーナー一家に恨まれていると思ったので、賃貸に回すことにした。

 事情が事情なので、借りたいという人がおらず、1年以上空きビルになっていた。普通に考えたらオーナー一家の霊は今もそのビルに取り付いているだろうと思う。


 すると、無人のはずなのに、なぜか火災が起きた。

 人が入れないようにするためなのか、1階の階段部分が激しく燃えていたそうだ。

 Bさんはその焼けた個所を直すまでは人に貸すこともできなくなってしまった。

 誰も住んでいないから火災保険に入るのを忘れていたのだ。


 そうこうしているうちに、Bさんは大病を患うようになり、買ったビルのことに手が回らなくなった。そして、競売の落札価格よりも、ものすごく安い金額で売りに出したそうだ。そのビルは今もあるが誰も住んでいないようだということだ。

 そこに引越そうとすると、いつも何かしらのアクシデントが起きて、結局取りやめると言うことが何度も続いていた。 


 オーナー一家の執念がそのビルを守っているのだろうと思う。

 競売物件に住み着いた念のようなものを考えると、うかつに手を出さない方がいいかもしれない。

 

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