痴漢(おススメ度★)
みんなは痴漢に遭ったことがあるだろうか?
俺は何回もある。
相手が男だったことも、女だったこともあった。
自慢ではない。
何とも言えず気持ちの悪いもんだからだ。
サラリーマンになってからは、満員電車で尻を触られたり、後ろから股間を掴まれたりした・・・満員電車だと体が動かせず、相手を確認できない。万事休すだった・・・そこで騒ぐと、俺が痴漢だと思われるかもしれないからだ。
これは人から聞いた話だ。
今30歳になるA君は、幼稚園から名門私立校に通っていた。
名門私立校なら、学校まで運転手付きの外車で送迎・・・と思うかもしれない。
しかし、それだと学校周辺が車だらけになってしまうので、公共の交通機関を利用するのが普通なのだ。
A君は小学校1年から電車通学をしていた。
私立小の子は大変だ。
最寄駅から一緒の友達なんて普通はいない。
大体1人でぽつんとしている。
子供を私立に通わせていた人に聞いた話では、コロナ前に海外からの旅行客が多かった頃は、子供だけで通学している姿や、制服が珍しいからと勝手に写真を撮られたりもしていたそうだ。
それに、知らない人に話しかけられることも多いとか。
A君に話を戻すと、彼が小学校5年生くらいになってから、通学の電車で痴漢に遭うようになってしまったそうだ。
一番最初はお尻を触られたが、荷物が当たっている気もしたし、本当に痴漢なのか確信がなかった。
それから、A君は毎日痴漢に遭うようになった。
いつも後ろから触られるのだが、A君は怖くて後ろを向けなかった。
それからは、どうしたら痴漢に遭わなくなるか、小学生なりに考えて、できるだけドアの近くに立つようにしていたそうだ。
そうすれば、人にお尻を向けなくて済むからだ。
または、シートが空いているときは、できるだけ座るようにしていた。
こうした対策のお陰で、痴漢に遭うことはなくなった。
それでも、電車が混んでいて、乗客に挟まれて立っていなくてはいけないこともある。
そんな時は必ず痴漢に遭った。
A君は見た目のすごくかわいい子で、素直で大人しかった。
生意気そうな子なら痴漢には遭いづらいだろうが、狙いやすいタイプだったのかもしれない。
やがて中学になると、さらに痴漢行為がエスカレートして、前の方を触られるようになった。
A君は学校の駅についても電車から降りられずに乗り過ごすようになった。
毎日、学校に遅刻するので、A君は先生にも母親にも責められる。
A君は尻を触られるのは諦めることにして、手前にカバンを持つようにした。
しばらくは大丈夫だった。
しかし、何日かするとカバンの間を手がすり抜けて来て、前を触って来るようになった。
A君は完全にノイローゼになってしまった。
恥ずかしくて人の顔を見られなくなり、学校でも人と話せなくなった。
自分が痴漢に遭うのは、自分がそれだけ価値のない人間で、こいつには痴漢してもいいと見下されているからだ、と思うようになった。
A君は最終的に、その痴漢している相手に報復しようと思った。
ただ、「やめてください」と言えばよかったのだが、彼にはそれができなかったのだ。
自宅から、刃物を持ち出した。
親が料理に凝っていたから、持って来たのは、
そして、いつものように痴漢が触りだすと、その手をぶすっと刺した。
しかし、A君は誤って自分の股間を刺してしまった。
周りの人はしばらく異変に気が付かなかった。
A君は痛みで立っていられなくなって、前のめりになっていると、隣の人がA君のナイフを見つけて叫び出した。
「キャー!この人、包丁持ってる!」
周りの人は慌ててA君から離れた。
次の駅までは電車中叫び声でいっぱいになった。
「どいて!」
「どけ!」
「キャー!!」
「やめて!」
A君はなぜか満足感があった。
これほど大騒ぎしたら、もう、痴漢は自分を襲わないだろうと思ったからだ。
A君は大事な所を切ってしまったのだから、ズボンは割けて、足元に血だまりができるほどに大量出血していた。
勇気ある人がA君からナイフを取り上げて、たまたま乗り合わせた医師がA君に応急処置を施してくれ、鉄道会社は救急搬送した。
A君は怪我が落ち着いてから、痴漢を撃退するつもりが自分の股間を刺してしまったと打ち明けた。
そんな大けがをした後でも、これでやっと痴漢に遭わなくなると嬉しそうだった。
母親は、A君が退院したら自分が学校まで送迎すると約束した。
しかし、A君は入院している間も痴漢に遭ってしまったそうだ。
看護師がオムツを替える時や、体を拭く時に、わざとナニに触って行くそうだ。
A君はストレスのせいで、まだ傷が完全に治っていないのに自分の縫合した部分を傷つけるようになった。
看護師が股間が血だらけになっているのを見て、大騒ぎになった。
最終的に、A君は拘束されて、精神科に入院することになった。
下記はカウンセリングで分かったことである。
A君の母親という人は異常なほど過保護な人だった。
母親は息子が中学生になっても、A君と一緒にお風呂に入っていた。
そして、幼稚園の頃と変わらず、あの部分を丁寧に洗ってやっていた。
A君はそれが嫌だったが、母親に言うことができなかった。
それほど、母親は高圧的で過干渉だった。
A君は一人っ子で、両親の夫婦仲は悪かった。
A君の一週間のスケジュールは全て母親にコントロールされ、習い事や塾などをいくつも掛け持ちしていたそうだ。
友達付き合いも、母親が気に入った子としか遊ばせてもらえなかった。
しかし、一番嫌だったのは、下半身を洗われることや、体の成長についてしつこく聞かれることだった。
A君が痴漢に遭ったのは本当だったのかもしれない。
しかし、毎日遭うというのはさすがにないだろう。一部はA君の幻覚だったのだ。
両親はA君の件でさらに不仲になって離婚し、その後は母親とはもう絶縁状態ということだ。
A君は現在、県外の施設に入居している。
わりと落ち着いて暮らしていると言うことだ。
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