介助者(おススメ度★)
これは、亡くなった母から聞いた話だ。
実家の近所にAさんという女性が住んでいた。
その人は盲目で高齢なのにも関わらず、一人暮らしをしていた。
母や近所の人たちはAさんを心配して、よく声を掛けていたそうだ。
例えば「スーパー行くけど、何かいりませんか?」とか、「困ったことはありませんか?」とか、家族がいればやってもらてるような細々したことを手伝おうとしていた。
みんながそうやって声を掛けるから、Aさんの家には1日に何度も、誰かしらが訪ねてくるのだった。
Aさんは一人暮らしなのに、ちゃんと自炊して、掃除などもやっていて、部屋はいつもきれいに片付いていたそうだ。
服装なども上品で、お洒落で、髪型も化粧もまるで目が見えているかのようにうまく仕上がっていた。
Aさんが40歳くらいの頃に目が見えなくなった時には、すでに今の家に住んでいたが、それにしても、やっていることが、まるで健常者と変わらないくらいに見えた。
母がAさんに尋ねたことがあるそうだ。
目が見えないのに、どうしていつも綺麗でいられるのか。
「あのね。どこなおかしなところがあると、うちにいる人が教えてくれるの。『寝癖がついてる』とか、『その色の組み合わせ変よ』とかね。
別に耳で聞こえるわけじゃなくて、誰かが心に話しかけてくるの。
でも、それが誰だかわからないのよ。私が目が見えなくなったころから、ずっと、助けてくれるのよ。不思議でしょ?
だから、一人でやってこれたのよ。
私、子どももいないし、本当にどうやって生活して行ったらいいかわからなかったけど。
見えない誰かがずっと見ててくれるの。だから、全然怖くないし、寂しくないの」
Aさんは一人でいても、いつも微笑んでいるように穏やかだった。
お節介な霊がAさんの家に住み着いていたのだろう、と俺は思う。
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