古鏡(おススメ度★)

 俺は若い頃からアンティークが大好きで、テレビ東京の「なんでも鑑定団」を長年視聴している。博物館や美術館にも月1は必ず足を運ぶ。地方に行った際には、地元の資料館なども訪れる。


 以前は骨董市に行ったり、古美術店を冷やかしたりしていた。

 しかし、あまり買ったことはない。

 本物かどうかわからないからだ。


 俺が持っている、アンティーク品に価値のある物はない。

 しいて言うなら時計だ。


 しかし、これは絶対本物というのを持っている。

 実家に先祖代々伝わるものだからだ。


 うちには古い銅の鏡がある。

 裏には花柄のような模様が入っている。

 神事用ではなく、女性が化粧をする時の鏡だと思う。


 本当は跡取りの長兄が持っているべきものだが、俺は古い物が好きだから勝手に持って来てしまった。


 祖父が木箱を作って、きちんと由緒書までしている。

「平安時代末期に□□(地名)を所有していた豪族の子孫〇〇家に伝来する鏡」となっている。


 金属なので、鏡面は錆のような物が浮いていてもう写らない。


 俺は古い物が好きだから、それを時々取り出して眺めていた。

 その時代の人を写していたと想像すると、当時もビデオのように録画できる機能があったらよかったのに・・・と本気で思う。その頃の習俗をこの目で見てみたい。


 ある時、それを見ながら飯を食っていると、ふと「何か」が写った。

 丸顔の太ったおばさんがそこにいるような気がしたのだ。

 色白で、目が細く、今の時代なら不美人に分類されるお顔をしていた。


 俺はぎょっとした。

 俺は鏡に呼び掛けて拝んだ。


「平安時代を見せてください」


 当時の人に平安時代が通じるわけがない。

 後世の人がつけたものだからだ。

 俺はYouTubeにアップされている琵琶の弾き語り、『平家物語』を流したりしてみた。

 平家物語は鎌倉時代の1240年には成立していたそうだ。

 平安時代の人なら意味が分かるだろうから。


 鏡の機嫌がいい時は、何となく人の輪郭のような物が写り、そうでない時は何も映らない。


 写真にも撮ったが、それの違いがはっきりと見えるのである。

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