犬の亭主(エロ)(おススメ度★)

 *一部性的な表現があるため、不快に感じる方もいると思います。

*犬好きな方も不快に思う箇所があります。


 俺の実家では犬を飼っていた。

 昭和世代の田舎なので雑種だった。

 当時から血統書つきの犬も売っていたが、親が貰い手のない犬を引き取って育てていた。


 犬の散歩はなぜか俺がしていた。

 両親とも健康状態が悪くて散歩させられなかったし、兄は部活をやっていて帰りが遅かったからだ。

 散歩に行かないと犬が吠える。


 犬ははっきり言って、そんなにかわいいものではなかった。

 俺に懐かないし、言うことを聞かない。

 生意気な弟のようなものだった。


 正直言って、俺は今でも動物を見てかわいいとは思わない。

 彼らにも、生物としての意思や尊厳を感じるからだ。

 頭を使ってちゃんと生きている。

 ただ、力関係で人間に支配されてしまっているだけだ。


 これは人から聞いた話だ。


 60代で未亡人のAさんという女の人がいた。

 その人は秋田犬を飼っていた。

 夫婦で飼っていたが、旦那さんが先に亡くなってしまった。


 大型犬は力が強い。

 Aさんは次第に散歩が難しくなった。

 Aさんの家は一戸建てだったが、庭はそれほど広くない。


 鎖に繋いでしまうと、運動量が減ってしまうので、Aさんは犬を庭に放し飼いにした。

 門を閉じておけば出ていけないと思ったのだ。

 犬はいつも塀から頭を出して、通行人に吠えていた。

 それで、近所から「怖い」と苦情が来てしまった。

 Aさんは室内飼いに切り替えた。


 海外ドラマなどでは、大型犬を室内で飼っているから大丈夫だと思ったようだ。

 Aさんは、心細い生活のうち、犬に精神的に頼るようになっていた。

 何でも犬中心の生活になって行った。


 犬はしきりにAさんにマウンティングするようになった。

 これは、犬がAさんを自分より下だと思っているということなのだ。

 Aさんが座っていると、犬は上に乗って来て腰を振った。


 Aさんは可哀そうになって、犬の繁殖行為を手伝った。

 犬はストレスがたまるから旺盛だった。

 寝るときは、毎晩一緒の布団で夫婦のように寝た。


 そのころには、すでに、犬とAさんの主従関係は逆転していた。

 年金暮らしだが、犬の方が食費が多くかかったし、犬が家じゅうを徘徊するので掃除が大変だった。

 年を取ると階段の上り下りが困難になっていたが、汚物を放置するわけにはいかなかった。


 ある時、Aさんは心臓麻痺で亡くなってしまった。 

 

 すると犬は空腹に耐えられず、Aさんの亡骸を食べ始めた。

 全部食べ終わって、骨も半分なくなった頃、犬はAさんの親族の人に発見された。

 親戚は、飼い主の亡骸を食べるなんてけしからんやつだと思った。

 それに、秋田犬など簡単に飼えるものではないから、引き取り手がなかった。

 

 問答無用で保健所に送られたということだ。

 

 この話を聞いて気持ち悪いと感じる人もいるだろう。

 

 しかし、動物をパートナーとして愛する人々がいて、彼らは動物と平等な関係を築いている。ズーフィリアという。

 だから、異常だと言うことはない。

 それに、犬が飼い主を食べることはあるそうだ。


 人間の価値観に当てはめると、この秋田犬の亭主は異常で残酷に思える。

 しかし、客観的に見ると、犬は飼い主に従うべきだという、我々の価値観がそう誤認させているだけである。


 

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