トランスジェンダー(エロ)(おススメ度★)

 *性的な表現があります。一部の方には不快に感じる可能性があります。


 俺が前いた会社の取引先に、日下くさか君(仮名)という新卒2年目の若い男の子がいた。

 色白で肌がきれいでかわいい顔をしてた。

 体も華奢で女装が似合いそうな感じ。


 その子が俺をすごく慕ってくれて、いろいろ質問したり話しかけてくるので、俺も調子に乗って色々教えてやったり、雑談をしたりしていた。

 彼はすごく聞き上手で、話していると自分が物凄く仕事のできる男と錯覚するような、人あしらいの上手い子だった。


 プロジェクトが終わった後に、お客さんとの食事会があった。

 そこで、日下君に個人の連絡先を聞かれたので、俺は喜んで教えた。

 きっと将来のために俺から色々盗みたいのかもしれないし、人脈を期待してるのかと思った。

 

 その子のためなら一肌脱いでもいいと思うような、とてもいい子だったのだ。


 俺はその子のことがすごく好きで、自分から飯に誘ったりもしていた。

 さらには、激務の合間を縫って、月1で会うくらいになっていった。


 彼と飯を食ってて、俺はその時手掛けていたプロジェクトが終わったら、1週間くらい有休を取ろうと思う、という話をした。

  

「どこか行くんですか?」

「まだ決まってなくてね。一人だし。どっかいいとこあるかな?」

「よかったら、一緒にどっか行きませんか?」

 日下君は嬉々としてそう言った。

 俺はちょっと不安だったが、誘いに乗った。

 俺は人と長時間いるのが苦手なタイプだからだ。

 

 しかし、そんなのは杞憂きゆうだった。

 気付けば俺たちは8日間も一緒にいたが、本当に楽しかったし、こんなに長く一緒にいられる人がいるんだと驚いたほどだった。


 しいて言うなら、一緒に旅行していて気になったのは、彼が温泉に入らないことだった。

 人前で裸になるのが恥ずかしいということだった。

 俺はそういう人もいるのかな、と無理強いはしなかった。


 最終日の前日の夜だった。日下君は布団に入った後、「聞いてほしいことがあるんです」と言ってきた。

「僕、実は性同一性障害なんです。」

「あ、そうなんだ。でも、何となくそんな気がしてたよ」

「今まで・・・ずっと江田さんのことが好きだったんです。一緒に寝てください」と、言って泣き出した。


 俺は断り辛くなって布団に入れてやった。

 きっと、随分悩んで告白して来たんだろうと思うと、かわいそうだった。

 しばらく、髪を撫でていると「キスしていいですか」と言うので、仕方なく承諾した。

「キスってどうやるんですか?」

 と、聞くので俺は日下君を女だと思って、彼が望むようにディープキスをしてやった。

 キスもしたことがないと言っていたが、ぎこちなくかわいかった。


 すると、もっと先までやりたそうだったので、俺はさすがに断った。

「ごめん。俺、男は無理」

「そうですよね。ごめんなさい」

 俺はもっとましな断り方があっただろうと、その場で後悔した。

「ほんとごめん。君はかわいいと思うんだけど」


 その後、俺たちは気まずくなって、自分から日下君に連絡をしなくなった。

 日下君も付き合えないならもういいや、と思ったようでそれっきりだった。


 それから、数年後、日下君から急に連絡があった。

 いきなり、会社の方に連絡があったのだ。

 俺は連絡先を変えて、さらに転職していたので、日下君はわざわざ調べて連絡をくれたのだった。


「会ってもらえませんか?」

 と、日下君のメールに書いてあった。

 俺はわざわざ連絡をくれたのが嬉しくて承諾した。


 すると次のメールに「変わり過ぎてて、びっくりするかもしれません」と書いてあった。

 

 ちょっと予感はあったが、彼は性転換手術をしていたのだ。

 俺に認めてもらいたくて、決断したそうだ。


「きれいになったね。びっくりしたよ」

 日下君はぱっと見は女性に見え、すごくきれいだった。

 男とは思えないほどウエストが細く、足もまっすぐでスタイル抜群だった。

「ありがとうございます。私も会えてうれしいです。会ってもらえると思ってなくて・・・。今もあの会社で働いてるんですよ」

「あ、そう。よかったね。社長さん受け入れてくれたんだ」

「はい。応援してくれてます」

 俺たちは久しぶりに会って、店が閉まるまでそこで語り続けた。


 二軒目で彼は告白した。

「性転換して、膣を作ったんですけど、今までセックスしたことがないんです」

 聞くと彼は今まで性経験が一切ないということだった。

「一番最初は、江田さんにもらってもらいたいなって」

 彼は赤くなりながら言った。

 俺は気が進まなかったが、そこまで思ってもらえるならと承諾した。


 別の日に待ち合わせて、高級ホテルで一夜を過ごした。

 俺の感想は、とても初めてとは思えないというものだった・・・。


 それから、ぷっつりと連絡が取れなくなった。

 

 俺は気になって、日下君の会社に連絡した。

 すると、日下君は何年も前にやめていたことがわかった。

 そして、今は新宿にあるニューハーフの風俗で働いていると知らされた。

 

 俺は怖くなった・・・。

 風俗で働いている人には申し訳ないが、俺は性病が怖いので風俗を利用したことががない。

 

 前にそれを日下君にちらっと言ったことがある。

 だから風俗で働いていると言うと、俺が断ると思って嘘をついたのだろう。

 そして、ばっくれたのは、俺が期待外れだったからに違いない。

 

 だから、彼とはそれっきり。それでよかったと思う。

 しかし、時々ニューハーフ風俗店のページを見て、彼がどこかに載っていないかなと思って探してしまう。

 俺はまた彼に会いたい。

 でも、会ってはいけない。

 そんな気がする。

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