万引き(おススメ度★)
俺が子どもの頃、本屋にある漫画は読み放題だった。
ビニールがかかってなくて、読んでいても怒られない。
でも、俺は全然金にならない客という訳ではなく、買う時は買うし、読んで終わりという訳ではない。
月刊の雑誌も3冊親が買ってくれて、本屋が家に届けてくれてた。
「小学〇年生」、学研の「学習」と「科学」だ。
母親も「婦人公論」とか、「暮しの手帖」、「主婦の友」、「主婦と生活」なんかをよく買ってた。
親父は「新潮」、「文春」のような週刊誌を買っていたと思う。
俺が放課後に本屋で漫画を立ち読みしてた時、新品の中に明らかに古書とわかる汚い本が混じっていた。例えば、全巻セットうちの一冊だけが古本なのだ。
誰かがすり替えたみたいだ。
俺が店の人にそれを教えてあげると、古書はいらないからとただでくれた。
俺はラッキーと喜んで家に持って帰った。
悪い人が仕込んだ漫画だから、何だか縁起が悪いようなモヤモヤした気分だった。
カバーも茶ばんでいて、異様に汚くてボロボロなのだ。
俺は別の日に本屋に行って、先日もらった漫画の次の巻を読もうと思った。
本棚を見てみたら、また古本に置き換わっていた。
また、店の人に教えてやった。
俺はずうずうしくなって、「それもらっていいですか?」と聞いた。
それで、またもらって帰って来た。
俺が行くたびに次の巻が古本になっていて、お店の人は俺を疑い始めた。
学校と名前を聞かれて、俺は本屋に行きづらくなってしまった。
そのうち、本屋での本のすり替えが学校でも話題にのぼるようになった。
その当時は小学生が漫画の立ち読みをするのは普通だったから、他のやつも古本を見つけてお店の人に教えていたのだ。
本のすり替えはお店の人が目を離した隙に行われたようだ。
店員は2人いたのに、どうやったんだろう。
気がついたら、多くの本が古本に置き換わっていた。
ある時は、タイトルの全巻。
お店は警察を呼んだ。
それからしばらく、本の置き換えはなくなった。
漫画はそのうち、レジから一番よく見える所に移された。
お店の人は漫画ばかりを必死に見張っていた。
しかし、ある時、棚卸ししてみたら、高額な本ばかりがごっそり無くなっていたそうだ。
俺の家にある漫画はどんどん薄汚くなって、しまいには何の漫画か判別できないようになっていた。
まるで、犯人の悪意を吸い取っているようだった。
気味が悪くなって処分した。
その書店は今はもうない。
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