失恋(おススメ度★)

 俺は最近、彼女と別れた。

 いいなぁ・・・。この響き。

 ずっと憧れていた。


 一時でも彼女がいて、別れた、と人に言えるから、それだけは満足している。

 彼女は超お嬢様で弁護士だった。

 しかも、美人。


 失恋の痛手を引きずる人も多いかも知れない。

 特に男。

 女は別れたらすぐ次に行く。前の男のことなんて思い出しもしない、という人が多い気がする。

 男は前の彼女が、今も俺を好きでいるに違いない、と思う人が多い。


 俺も元カノが今も俺のことが忘れられなくて、そのうち連絡をしてくる気がしてしまう。

 連絡して来ないのは、彼女のプライドが許さないからだ。


 しかし、俺は彼女の連絡先をすべて消した。

 そしたら、もう俺からは連絡できないからだ。

 俺から連絡しても、きっと拒絶されるだけだ。

 彼女は絶対連絡してこない。

 理性ではわかっている。

 早く忘れないといけない。

 

 しかし、夜になると彼女が俺の隣に寝に来る。

 俺が布団に入ると、そっと掛布団を上げて入ってくる。

 暗がりでも人の形があるのがわかる。


 使っていたシャンプーの匂いがする。

 何だか暖かい空気がじんわりと伝わる。

 

 彼女の目線を感じる。

 俺の方を暖かい目で見ている。

 

 触れないとわかっているので、もう触るのはやめた。

 きっと彼女は俺のことが忘れられなくて、毎晩そうしてやって来るのだろう。


 俺はそこにいる元カノを感じながら毎晩寝ている。

 だから、彼女のためにいつも右側は開けている。 


 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る