　俺は独身で身寄りがない。

　いや、実際は兄弟がいるけど、兄貴に俺の墓の世話を頼みたくない。

　兄とは不仲だからだ。

　だから、共同墓地に埋葬して欲しいと遺言している。

　死んだ後はこうして欲しいということを決めておき、「死後事務委任」というのを司法書士と契約している。

　もしろん有償だ。

　共同墓地には、集落、宗教などでやっているコミュニティ型や共同納骨等がある。

　俺は今のところお寺の共同墓地を指定しているが、知らない人と墓に入るのはちょっと抵抗がある。

　俺みたいな人づきあいの苦手な人間は、あの世でも住人たちと上手くやれないだろう。

　これは、知り合いから聞いた話だ。

　ある人Ａさん（子持ち）がＢさんと不倫をして離婚。

　その後、Ｂさんと再婚した。

　ＡＢさんの間には子供がいなかった。

　数十年後に、Ｂさんが先に病気で亡くなってしまった。

　Ａさんは旧家の出身だったが、夫婦の墓を建てる余裕がなく、ＢさんはＡさんの先祖代々の墓に入った。

　その後、Ａさんは亡くなったが、遺骨は実子が供養することになった。

　だから、先祖代々の墓にＡさんの遺骨は入っていない。

　俺は他人だが、Ｂさんがあの世で肩身の狭い思いをしていないか気になる。

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。（ログインが必要です）

新規登録で充実の読書を

マイページ: 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる; 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める; フォローしたユーザーの活動を追える
通知: 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴: 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい