祟り(おススメ度★)
俺は祟りを信じてしまう。
ホラー好きの俺が一番怖いと思うのは、ベタ過ぎるが、皇居の近くにある将門塚だ。
将門塚は知ってる人も多いと思うけど、移転計画が出るたびに関係者が何人も亡くなり断念、今だに大手町の超一等地に陣取っている曰く付きの首塚だ。うわさによると土地だけで40億もするそうだ。
参拝者がお参りの帰りに、石碑にお尻を向けないように変な風に配置されている。
俺が行った時も、お尻を向けないように物凄い神経を集中して帰って来た。
一度将門塚にお参りすれば、その後は自らホラーを求めなくても、背筋の凍るような恐怖を死ぬまで味わうことができるだろう。
今日は祟りというほどでもないけど、たまにありそうな話をする。みんなの周囲に不倫略奪婚をした人はいるだろうか。ドラマなんかではよくあるけど、現実にはあまり聞かない。既婚者にそこまで入れ込む女性は今日日あまりいないのではないだろうか。俺の周辺でも不倫はままあるけど、最終的には別れている。
ある40代の女性が言っていた。
「不倫して結婚しても、その後は幸せになってない。病気になったり不幸になっている場合が多いと思う」
俺は「例えば?」と聞いてみた。女性は不倫するような人を毛嫌いして攻撃するのが普通だからだ。
「私の親戚で・・・」と話し始めたのが次のような話だった。
親戚にAさんという子持ちの40代の男性がいた。
Aさんはあまり仕事をちゃんとしていないような人だった。
奥さんはパートに出たりして必死に家計を支えて、子供たちを育てていた。
Aさんは人妻Bさん(40代後半)と不倫をした。
AさんはBさんと一緒になるために家を出てしまった。
そのうち双方とも離婚。
2人は晴れて再婚。
Aさんはしばらくして病気になって働けなくなってしまった。
その後はBさんが飲食店などで働いて家計を支えていた。
2人は小さなアパートで暮らすようになった。
Bさんが働けなくなると、夫婦で生活保護を受けることに。
Aさんは元は自己所有の一戸建てで暮らしていたそうだ。
自分がそこまで転落するとは思わなかっただろう。
「2人で一緒にいられるんだからいいんじゃないの?どこが不幸なわけ?奥さんだってそんな旦那だったらいなくても困らないだろうし。」
「そうだけど。でも、他にも不倫して結婚した人はみんな不幸になってると思うよ。」
次に話し出したのは、ちょっと気持ち悪い話だった。
友達のC子さんは会社の同僚と不倫をして離婚。
その不倫相手と再婚した。
C子さんは最初の結婚で子供がいなかった。
代わりに黒猫を可愛がっていて、猫はC子さんが引き取ることに。
もと旦那Dさんはマンションから出て行った。
マンションはC子さんの所有だったからだ。
Dさんは別れる前に合鍵を作っていて、侵入しようとしたけど鍵を変えられてしまっていて一度は断念した。
そこでDさんは、鍵開け業者に頼んでCさんの部屋の鍵を開けさせた。
運転免許証の住所がC子さんのマンションのままだったので、問題なく開けてもらえたということだった。
Dさんはずかずかと部屋に入ると、黒猫を捕まえてベランダに連れて行った。
猫はDさんを疑うことはなかった。
さすがに様子がおかしいと思った猫は、命の危機を感じて逃げようとしたが、Dさんは無理やり大通りに投げ落とした。
猫はうねうねと体を動かしながら、地面に向かって落ちて行った。
そして、たまたまやってきた車に跳ねられて即死。
Dさんはベランダの戸を少し開けて、猫が自分で出て行ったように偽装工作をした。
しかし、ドアの鍵は締められないので、鍵を開けたまま家に帰って元奥さんから電話が来るのを待っていた。
夕方になると、Cさんから泣きながら電話がかかって来た。
「あなたがやったんでしょ?」とDさんは詰め寄られた。
Dさんは言った。
「お前みたいな人間が幸せになれるわけないだろう。お前のせいで猫が死んだんだ。ざまあみろ」
「すごい詳しいね。何でそこまで知ってるの?」
「それ、私だから」
その人は笑って言った。
「え?」
俺は聞き返した。
「だから私ってずっと不幸なのよね」
その人は会社の事務のパートの人だった。
目じりに小じわがあって、もう年齢相応だけど、10年若かったら美人だったろうというような顔だった。
いつも生活に疲れ切ったような表情をしていた。
バツイチで独身だと聞いていた。
「その時の旦那さんとはもう別れたの?」
「まだ。今、行方不明だから。」
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