影(おススメ度★)

中学の頃。

学校の授業中、先生の後ろに影が見えた。

40代の男の先生で社会を担当していた。

その先生の輪郭の真後ろに、もう一人誰かが立ってる。


そこにもう一人誰かいるはずなんかない。

だって、発言もせずに意味もなく、真後ろに立っているわけがないんだから。


その影が自分にしか見えていないだろうとは知っていた。

だから、誰にも言えずに黙っていた。


毎回、同じ先生の後ろにだけ影が見えた。

影と言っても黒い影じゃなくて、ぼんやりした人の輪郭。

自分の目がおかしいのかと思ったけど、先生がどうやら二人いるみたいだった。


次第にその影は先生本体からずれて行き、じわじわと横に拡張して行った。

そして、最終的に先生が二人になった。


もう一人の先生は何も喋らず立っているだけ。

じんわりとした泳ぐような眼をして、口は半開き。

木偶の某か、まるで粘土でできた人形のようだった。

そうやってどのくらい授業を受けたか忘れたけど、影だった先生は最後に言った。


「今までありがとう。さようなら。」


それが先生を見た最後でした。

先生は倒れて退職なさいました。

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