母の死(実話)(おススメ度★)

 父は学生時代に亡くなったけど、母は数年前まで生きていた。

 コロナ寡の前に亡くなったので、もしかしたら苦しまなくて済んでよかったのかなとも思う。


 母は兄貴の家の近くの老人ホームに入っていた。

 それで、兄貴の奥さんが様子を見に行ってくれてた。


 孫は二人いて、どちらもその頃は小学生だった。

 母は孫をとてもかわいがっていて、時々車いすで一緒に買い物に出かけたりしていたみたいだ。

 年金で孫に色々買ってあげていて、孫も喜んで出かけていた。

 出かけた時は、奥さんが俺の携帯に写真を送ってくれてた。


 でも、ある時期を境に、急に具合が悪くなって、入院した。

 一回退院したけど、すぐ再入院してそのまま亡くなってしまった。


 俺はあまり母に会えなかった。

 入院して会ったのは三回くらい。

 一回目は意識がしっかりしていて元気だった。

 すでにボケてたけど、俺が誰かわかっていた。

 後の二回は、意識があるかどうかわからない状態で、話しかけても反応がなかった。

 正直会うのが怖かった。

 人が死ぬということ、俺の人生から母が永遠にいなくなってしまうのが怖かった。


 亡くなってから、母は俺の夢には全然出て来ない。

 学生の頃から兄に比べて出来が悪くて、まだ結婚もしていない俺は実家でも居場所がなかった。

 大学の頃の長期の休みもバイトを理由に帰省しなかった。

 母と一緒にいても何を話していいかわからなかったからだ。


 母は姪の夢には出てきたそうだ。


 母は元気な頃と同じように、車いすで孫たちと一緒にショッピングモールに行って、おもちゃを何個も買ってやったそうだ。

 そして、「今までありがとう。もう、おじいちゃんのところに帰るよ」と言っていたそうだ。


 母は亡くなった親父と二人、あの世でテレビの野球中継でも見ているのかもしれない。

 幽霊の存在は信じないけど、何となく親がどこかで自分を見ているような気はいつもする。

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