中途採用(おススメ度★)

 俺は会社員。


 今の若い子はメールなんてしないかもしれないけど、会社で働いてると通信手段はほぼメールのみ。

 社内連絡だと電話、Zoom、Line、ショートメールなんかも使うけど、情報共有のためにメールが一番多い。


 会社のメールは基本的に誰に見られてもいいようにしてる。

 だから、俺は私用でメールを使うことはない。


 この間、会社を首になった人がいて、その人のメールを見てみた。

 急に解雇されたんで、パソコンはその場で没収。

 その人はそのまま立ち入り禁止になりました。


 俺はその人に恨まれてるらしくて、今でもその人が会社に来るんじゃないかと怯えてる。

 俺が嫌がらせをしてると思ってたらしく、他の人にはそう言ってたそうだ。

 俺、何にもしてねえし。というか、挨拶くらいしか話したことない人なんだよね。


 俺がその人と全く同じ職種で採用されて、俺が慣れた頃その人が首になったんで、仕事を取られたと思ったみたい。

 でも、引き継ぎ無しでこっちは結構大変だったのに・・・。


 その人(仮に梅川さんとする)はちょっと変で顧客からも苦情が出ていたそう。

 近々首になると他の人から聞いていた。

 俺は恨まれると怖いので、できるだけ関わらないようにしていた。

 近くにいるのに連絡はメールのみ・・・。


 でも、その人が離れた所にいるだけで怖かった。


 その人が会社に来なくなった後、メールを読んだら、俺の上司宛にメールを何回も送っていた。


 4月1日

 今日、江田さん(俺。仮名)が入社したけど、私がいるのにどうして同じ職種の人を採用したんでしょうか。今もそんなに忙しくありません。私はクビになるんでしょうか。


 →上司はあなた一人だと休んだ時に困るから、バックアップのために採用した、と説明していた。


 5月某日

 江田さんが私に黙ってお客さんにコンタクトを取っていました。お客さんも「梅川さんが担当なのにどうしたんですか」と聞いて来て困っています。


 →「これからは、江田さんと分担してやってもらいます」と、上司は返していたけど、その後も「一人でやった方が早い」とか「効率がいい」というやり取りを延々としていた。自分じゃないと駄目というお客さんも多いです、等々。

 上司から返事がないと、返事をくださいという催促のメールが何度も送られていた。


 6月某日

 昨日は取り乱して泣いてしまって申し訳ありませんでした。江田さんが入社してから精神的に不安定になっていて、心療内科に通うことになりました。


 →上司は無理しないでください、という事務的なメールを返していた。

 

 それから、梅川さんは病状の報告をするメールを毎週のように上司に送るようになっていた。どんな薬を飲んでるとか、調子はどうとか。私がこんな風になってしまったのは、会社にも責任があると思います。と書いてあった。


 その頃は、梅川さんはメンタルをやられているので、容易に首にできないという雰囲気になっていた。


 7月まとめ

 トイレに行ったら江田さんがいて、舌打ちされました。(絶対ない)

 江田さんが出張のお土産を配っていたけど、私だけもらえませんでした。(仲いい人だけにあげたので・・・全員には配ってない)

 江田さんが私が無能だとみんなに言いふらしています。(ミスが多いというのは上司に報告してました)


 8月まとめ

 江田さんが後ろを通った時、私のメールを盗み見ていました。

 最近、いろいろおかしなことが起こるので、江田さんに監視されていると思います。


 9月まとめ

 江田さんが会社帰りに私の跡をついて来ます。

 非通知の電話が来て困っています。

 多分、江田さんだと思います。

 これ以上やめないと警察に被害届を出そうと思っています。

 部長からも注意してください。


 その頃、俺は部長から、梅川さんが『俺が嫌がらせをしている』と言っているけど、本当か?と聞かれた。 

 もちろん、そんな事実はないし、元々ほとんど接点がない。


 俺は順調に仕事をこなして、梅川さんは9月から出禁になり、パソコンは没収。

 解雇になりました。


 2月某日


 俺は梅川さんのメールを見てるうちに、人事に出した扶養控除申告書を見つけた。それで、住所や電話番号を知った。


 今、どうしてるんだろう。

 失業保険もらってるけど、生活できてるだろうか。


 俺は梅川さんの家をGoogle mapで調べた。

 真新しい一戸建てだった。

 梅川さんは独身なのに。

 外にはファミリー向けの車が停まってる。


 家の固定電話にも電話した。

 女が出たから、すぐ切った。

 女兄妹なんかと住んでるのかな。


 今日は誰と住んでるか見届けたいと思う。


 






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