赤専門青果店

 商店街でひときわ目立つ、真っ赤な店がある。

 そこは青果店だが、赤いものしかない。

 店が放つ異様なまぶしさに吸い寄せられ、私はつい立ち寄った。

 店側が用意したビニールの手袋を入口ではめる。それで商品をつかむのが、店のルールだそうだ。


 本当に赤ばかりの品揃えだ。

 りんご、いちご、トマトなどはまだいい。

 にんじんやきゅうり、メロン、レモンのような形をしたものも、みんな際限なく真っ赤だった。

 私はなぜか無性に、珍しいものを買いたくなった。

 赤ばかりの青果から、きゅうりっぽくて赤い物体を一本取る。

「すみません。これをください」

 料金はいつものきゅうりの相場と変わらなかった。


 店から出ると、きゅうり的な赤いものの味がやけに気になった。

 袋からそれを取り出し、少しだけ一口かじってみる。

 その瞬間、舌が業火につつまれるような辛さに襲われた。


「うわあああああっっっっっ!!!」

 私が叫ぶと、その口からリアルに炎が吹き出され、たまたま止まっていた自転車のサドルを火に包んでしまった。

 いろいろな意味で恐ろしくなって、私はその場から逃げ出した。

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