バナナの抵抗

 バナナの皮をむこうとしたら、それ自体がいきなり赤く染まった。

 まるで中身をさらすことを恥ずかしがっているみたいだった。

「ちょっと、人にされてイヤなことしないでよ」

 バナナの方から、そんな色っぽい声が聞こえた。


「アンタだって、同じことされたら恥ずかしいくせに」

 同じ方からそんな一言が聞こえたので、僕はバナナが喋っていると確信した。

 僕は思わずバナナをバスケットに戻し、その日は食べなかった。


 翌日。

 学校での体育の授業前に、僕はハーフパンツを下ろされた。

「うわっ、バナナ柄のトランクスかよ。ダッサ~」

 周囲の男子たちに笑われながら、あわててハーフパンツを履きなおす。

「お前、何赤くなってんだよ」

 誰かが僕をそう笑う。

 そのとき僕は、前日のバナナの気持ちが痛いほどわかった。

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