彼女の考えなら何でもわかる

 女心をわかりきれるか、僕は不安だった。

 しかし彼女と出会ったことで、その懸念は消えた。

 なぜなら彼女は、いつも頭上にメッセージが出るからだ。

 この世界では人類の進化に次ぐ進化の過程で、IT技術をともなった人間が生まれるようになったのだ。


 たとえば彼女の頭の上に「今日はモールに行きたいな」と出たら、僕は素直にそこへ連れていってあげる。

 「銀のネックレスがほしい」と言ったら、10万円するとっておきのものを買ってあげる。


 ある日僕はふとこう言った。

「そうだ、あかりちゃん、今日は何食べる?」

 すると彼女の頭上に、こんな言葉が浮かんだ。

「はあ、何言ってんの、圭太?」

 僕は大切なことをすっかり忘れていた。


 彼女はメッセージを発する代わりに、口を持たなかった。


「私の身体的事情を理解しないやつはキライ、だからさようなら」

 彼女は怒りの形相でこの文章を見せつけると、家を去ってしまった。

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