嵐よけの妖怪『アラサレ』
僕の住む港町には、よく嵐が来る。
そのたびに床下や床上浸水、停電などの被害に見舞われ、人々は生活に困った。
家屋ごと嵐で吹き飛ばされ、命を落とす人さえいた。
そこで町長は、昨年嵐よけの神社を建てた。
疫病封じのアマビエを参考に作られた「アラサレ」を考案し、その像を神社に捧げた。
この年の夏から秋にかけて、4度ぐらい嵐の予報があった。
しかしすべて港町までギリギリのところで、海へ逸れてくれた。
ある秋の晴れた日、僕は散歩がてらに近くの港まで出かけてみた。
するとそこに、まるで集会のような人だかりがあり、怒声が飛び交っていた。
かき分けると、町長が漁師たちに詰め寄られていた。
「アラサレのせいで、今年の夏はほとんど海が荒れてばかりで、漁ができなかったんだよ!」
「予報ルートが外れた嵐で、俺の仲間の船が行方不明になったんだぞ!」
アラサレは嵐を消せない。だから結局、誰かが犠牲になるわけだ。
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