瓦の怨念

 ある夜、たくさんの瓦の破片が、ひとつの方向を目指して漂っていく。

 大きい破片から小さな破片まで、それぞれが青白く淡い光に包まれていた。


 彼らが集まったのは、町内でも有名な子ども空手教室だった。

 小中学生による空手の全国大会で、優勝を争うほどの名門だ。

 50年ぐらいの歴史を誇るこの教室では、たくさんの瓦が割られてきた。


 破片たちはそっと地べたに下り、教室をしばらく囲んでいた。

 やがて気が済んだのか、中にいる人たちに見られないようにそそくさと集団で去っていく。


 3日後、空手教室の関係者や子どもたちは、大会の遠征先で食中毒に当たった。おかげで大会は欠場するハメになった。

 瓦の怨念が、そうさせたのか。

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