車上荒らしは逃げられない

「よし」

 車のカギが開いた瞬間、男は悪意を思わせる笑みを浮かべた。

 その車は、彼のものではない。

 男が扉を開いたときだった。


 車内から凄まじいアラーム音が鳴り響く。

 男は焦った様子で扉を閉め、駐車場から逃げ出した。

 しかし逃げても逃げても、アラームは一向になりやまない。


「な、何でいつまでも音がこんなに聞こえるんだ!」

 男はすっかりパニック状態だ。


 実は車に仕掛けられた防犯ブザーは特殊仕様である。

 音だけが車の扉をすり抜け、犯人をどこまでも追いかけるのだ。


 このブザーは警察庁の公式防犯道具に認定されているため、音に追われる車上荒らしは現行犯で確保できる。

 この男も例外ではなく、自転車でパトロールしていた警察官に追跡アラームで気づかれ、あっけなく捕まってしまった。


 静まり返った駐車場では、車の持ち主である男性が駆け寄る。愛車の無事に安堵の笑みを浮かべるのだった。

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