夢を見せる痛み止め

 私は痛み止めといわれるものを飲んだ。

 ひざの関節痛がつらかったからだ。

 水で錠剤を流し込んだ直後から、ひざから痛いという感覚が消えていった。

 それどころか、意識がだんだんと遠のき、全身の感覚とともにどこかへ流れ去った。


 いつのまにか私はなぜか空を飛んでいた。

 虹色に染まった大気の下で、風を感じていた。

 まるで桃源郷にいるような気分だ。


 そのとき、正面から黒みがかっていて、重々しい物体がゆっくりとこちらに迫ってくる。

 隕石だ。

 なぜだ。ここは宇宙ではなく、不思議な異世界だろう。

 右へ左へと逃げようとするが、浮遊した体をうまくコントロールできず、もがくだけだった。

 抵抗むなしく隕石にぶつかった私は、真っ逆さまに湖に落ちた。


 直後に目が覚め、ベッドに寝入っていたことに気づいた。

 ひざの関節痛が、すぐに私を現実へ引き戻す。

 薬は私を現実から逃がしてくれたが、それも長くは続かないようだ。

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