キュルルンレーダー

 僕の胸元からアラームが鳴り響く。

 1年A組の教室に入ろうと廊下を歩いているとき、2つ隣のC組の前を通ったら音が始まった。

 ブレザーの胸ポケットからブザーのような機械を出すと、表面の上部に埋め込まれた桃色のランプが、音に合わせて点滅していた。


 持ち主に胸キュンな奴が、半径5メートル以内にいることをそいつは教えてくれる。名前はキュルルンレーダーだ。


 僕は早速C組の教室に入る。鳴りっぱなしのアラームに、教室中の視線が奪われた。

「すみません、僕のことを好きな人はいますか?」

 教室の生徒たちはザワザワするだけで、誰も名乗り出なかった。


 それから僕はアラームが鳴るたびに、その場でこう叫んだ。

「すみません、このあたりで僕を好きな人はいますか?」

 しかし名乗り出る者はおらず、みんな他人のフリをするだけだ。


 結局高校の3年間、アラームは鳴り続けても、好きな人は現れなかった。

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